「With the Wind」 Scott Tsumura 写真展 @ヨドバシフォトギャラリー INSTANCE

昨日は新宿の「INSTANCE」で開催されている『「With the Wind」 Scott Tsumura 写真展』を見てきたので、簡単ながら感想をまとめておきます。本当は代々木VILLAGE by kurkkuで開催中の『藤原新也写真展「夢つづれ」』を見てから新宿へ移動する予定だったのですが、午後の三時半ころにkurkkuに到着したものの、その日の開場は夕方の四時からとの張り紙が。仕方なく、kurkkuの庭園みたいなところでボーッと待つことにしました(こんなかんじの場所)。

RICOH GXR + GR LENS A12 28mm F2.5
RICOH GXR + GR LENS A12 28mm F2.5
RICOH GXR + GR LENS A12 28mm F2.5
RICOH GXR + GR LENS A12 28mm F2.5

サボテンに萌えながらイチャイチャしているカップルとかを横目に待つことしばし、しかしトイレの隣に設けられた喫煙コーナーにたむろする男衆の莨の煙に耐えられず退散し、kurkkuの外に突っ立っていたものの、四時を過ぎてもいっこうに会場が開く気配がないので、仕方なく昨日は諦めてそのまま新宿に向かうことに。

実は「INSTANCE」の場所を西口ヨドバシの建物の中のどこかと完全に勘違いしていて、いっこうに見つからないのに大汗をかいていたところ、マルチメディア館だったかの一階レジのそばにチャンと地図が掲げられていました。それを頼りに隣のビルに移動したものの、これがまた地下一階と地下二階の微妙な位置関係に迷うこと迷うこと(爆)。ようやく会場の「INSTANCE」にたどり着いたときにはかなり時間が経ってしまってて大慌て。

雑居ビルめいたMY新宿第2の建物の雰囲気とは大きく異なり、 INSTANCEは非常にシックな落ち着いた会場でした。中に入ると、まず展示されていたのが、このページにある写真で、これが素晴らしい。ライカのワークショップを受けてから、氏の写真の風格は、より緻密に、色鮮やかで、そして構図に配慮した西洋絵画的なものへと深化してきている、――個人的にはそんな気がしているのですが、きっちりと絞られた絵画的な構図から、PCのディスプレイではフラットに感じられた写真が、今回のプリントではとても立体的に感じられました。

それが『ピクトラン社の「局紙」という少しザラっとしたマットな風合いの紙』によるものなのかは判らないのですが、インクジェットプリンターによる印刷によって、”盛られた”風合いが出たことで、『シアトルの少し密度の高い、しっとりとした空気感』を、絵画的な構築美によってとらえた氏の技法とともに、どこか油絵を彷彿とさせる仕上がりになっていたところも良かったです。

で、照明を落とした暗い会場の奥にふと眼をやると、何と Scott Tsumura氏本人の姿が(爆)。若い女の子とどの写真が一番好きか、みたいな話をしていたのですが、耳を澄ませつつ背中で二人の会話を聞いていると、やがて彼女にレンジファインダーのカメラ(ライカ?)を持たせて、Scott 氏が写真を撮ってもらうというかんじで話が進み、まずは氏がそのお手本にと、展示された写真の横に佇む彼女をワンショット。――このときの様子を横目でジーッと見つめていた自分も相当に陰気くさいんですが(爆)、Scott 氏のカメラを構え、シャッターを押すまでの美しい所作がとても印象に残りました。

何というか、まずカメラの構えからして、ちょっと違うというか、……目元にカメラを持って行くまでの挙措が、カメラを持つ、構えるというよりは、抹茶をいただくときのようなかんじで、――という形容もヘンですが、無駄な力が入っていない。被写体の女性と軽い会話を交えながら、すっ、とシャツターを押までの一連の動作がとても自然で、うーむ……ライカ使いってみんなこんなかんじなのかと感じ入った次第(爆)。

プリントはどれも素晴らしい仕上がりだったのですが、自分が特にイイと感じたのは、会場を入ったところに掲げられたこの写真と、Thambar 2.2/9で撮影した少女の寝顔でしょうか。この少女の写真をじっと眺めていて気がついたことなのですが、今回のインクジェットプリンターによるプリントは、まるで金粉を散らしたようにきらきらと輝いている。これがThambar の繊細なトーンと、少女の寝顔という被写体に絶妙な彩りを添えていたところが素晴らしい。この金粉のような綺羅を、控えめながら見る位置によってはしっかりと判るように配慮された会場の照明も秀逸で、氏が撮影したその場所の『暖かな余韻』が感じられる写真の数々を十分に堪能することができました。ライカ使いならずとも、これはオススメです。