宇宙の家 / 芦花公園

アマゾンで検索するたびに関連商品として表示されるので、ジャケ画の気持ち悪さにも惹かれて読んでみました。結論からいうと、非常に読後感の気持ち悪い(褒め言葉)一編。怪談とも、ホラーとも、SFともつかない不気味さ、落ちつかなさの際だつ物語で、強いて言えば、『新耳袋』の名作「山の牧場」にも通じる、論理でとらえることのかなわない恐ろしさというか……

物語は、怪談らしい一人語りで、語り手が小学生のときに体験した恐ろしい出来事、――という枠の中で、突然日常生活を剥奪され、いまはUFO公園があるという場所に監禁されたときの恐ろしい話が語られていくのですけど、UFO公園のうさわりから、宇宙人が絡んでいるのカモ、――という先入観を読者に与えつつも、語り手にふりかかる理不尽な体験は現実世界の犯罪のようにも見受けられる。

監禁場所で語り手を世話する婆さんも、一見すると人が良さそうな感じではあるものの、それがどうにもつくられたもののに感じられる一方、自宅から拉致されるときにくっついてきた不気味な化け物と同居しているという設定が気持ち悪い。この怪異なのか、それともやはり宇宙人なのか定かではない化け物の造詣が餓鬼を連想させるところもポイントで、ハッキリした答えを用意せず、語り手の体験に裏打ちされた「真相」も、最後には彼じしんの妄想なのか、という曖昧な結末に流れていく展開はこの手の物語の定番ながら、怪談語りの枠組みで理解しようとしても決して捉えきれない、論理から逸脱した事件の様態に見られるチープさ(宇宙人、餓鬼、異空間)がまた素人がひねり出した実話怪談めく雰囲気を醸し出しているところが二重丸。

この作者の気持ち悪い、ぶきみな作風はかなり好みで(そもそも「山の牧場」がメッチャ好み)、角川ホラー文庫からも何冊か刊行されているようなので、時間ができたら手に取ってみたいと思います。