異端の祝祭 / 芦花公園

アマゾンでしきりにオススメされてた『宇宙の家』をきっかけに手に取った作家のシリーズもの。ちょっと『宇宙の家』とは違う路線で面食らいましたが、それでもなかなか愉しめました。

物語は、就職活動中のさえない娘ッ子が、大手食品会社の面接に合格すると、さっそく翌日から山ン中の怪しい施設で妙な研修を受けさせられることに。彼女はふしぎな魅力を持つ男の導かれるまま、おぞましい仕事をこなしていく。一方、心霊体質の娘の失踪を心配した兄は、心霊事件を扱う事務所を訪ね、娘の行方を捜してほしいというのだが、――という話。

この心霊事件を生業とする事務所のボーイが一応の主人公で、その先輩であるパートナーとなる女が、心霊体質があるのか不明ではあるものの、兄の潜入捜査の結果をもとに、かなりヤバげな宗教絡みの案件であると喝破してみせる。この信仰というのが、日本でもかなり有名な神社なのだけども、冒頭から娘の視点で語られる儀式(?)の様態がかなりヘンであるところがミソ。ときどき出てくるひらがなの呪文めく言葉や、動物の生け贄をつかって行っている怪しいことなど、くだんの神社の印象からは乖離した違和感から、異様な信仰の様態が暴かれていく展開はミステリっぽい。

この信仰の、どうもハッキリ、キッチリした形にはまらない気持ち悪さは、たしかに『宇宙の家』にも感じられ、これが作者の個性なのカモしれません。作品紹介には「民俗学カルトホラー」とあり、たしかにカルトではあるものの、合成着色料をタップリまぶした駄菓子のようなチープさが、ひばり風味をムンムンと醸し出しているところに、キワモノマニアであればぐっと来るのではないでしょうか。

後半は、登場人物の過去が次々と語られ、皆がみなおしなべてトラウマ持ちのキ印ばかりというさなか、善悪も何もかもスッ飛ばして、勧善懲悪の骨法からはかけ離れたスペクタルを魅せてくれます。そして事件そのものが解決したあと、エピローグ的に語られる当事者たちの現在を安息とみるか、地獄の種とみるか、――このあたりの不穏な余韻が素晴らしい。

個人的には真相が曖昧なままイヤーな読後感だけが残る『宇宙の家』の方が好みですが、こちらも、これはこれで愉しめる逸品といえるのではないでしょうか。シリーズものっぽいので、また機会があれば続きの二冊を読んでみたいと思います。

宇宙の家 / 芦花公園