バルテュス展 Balthus: A Retrospective@東京都美術館

バルテュス展 Balthus: A Retrospective@東京都美術館今週末で終わりとなる『バルテュス展 Balthus: A Retrospective』を観に行ってきました。前売り券まで手に入れて準備万端、始まると同時に行く気マンマンだったのですが、体調不良の日が続き、結局観に行ったのは雨の日の日曜日、今月の八日というテイタラク。

何でも会場は大変な混みようとの噂ゆえ、開館と同時に入ったものの、雨という天候ゆえかそれほどの人ではなく、結構じっくり観ることができました、――とはいえ、会場となる東京都美術館は複数階を用いての展示となっており、前半に『美しい日々』、『夢見るテレーズ』といった”大物”を用意していたため、前半は激混み。やはり『美しい日々』、『夢見るテレーズ』は本展示の目玉ということもあって、しばし立ち止まってみる人が多くいたのはいいとして、先も述べた通り複数階の展示であるため、今回は一渡りすべての展示を見たあと、最初に戻って見るということができません。なので、『美しい日々』、『夢見るテレーズ』をじっくりと鑑賞したい人は要注意。どんなに混んでいてもここはじっと我慢の子で、この作品の素晴らしさを眼に焼きつけておく必要があります。

個人的には、バルテュスといえば『山(夏)』に『部屋』、『コメルス・サン・タンドレ小路』が好みなのですが、今回の展示ではお預け。もっとも『山(夏)』に関しては、タイトルもそのままの『≪山・夏≫のための習作』が、そして『部屋』では『決して来ない時』を見ることができたのでヨシとして、今回一番ヨカッタのは『地中海の猫』の実物を堪能できたことでしょうか。こちらはかなりの大作にもかかわらず、『美しい日々』、『夢見るテレーズ』といった少女シリーズではないためか、中盤の展示であるため、人も少なくしばし独り占めすることができました。

もう一つの収穫は「エミリー・ブロンテ『嵐が丘』のための14枚の挿絵」で、結構大胆にデフォルメされた人物像と無表情な雰囲気が何となーく諸星大二郎の漫画に似ているような、というかクリソツ(爆)。

それと今回の展示のウリのひとつであるバルテュスのアトリエの再現ですが、これも素晴らしかったです。会場には採光窓をとりつけることなどできないため、アトリエの空気感を完全再現することなど当然無理ではあるのですが、再現されたアトリエの隣には液晶がすえつけられ、「あこがれのアーティストに会いたい 江國香織 バルテュスの光の世界へ」が流れており、江國香織を傍らにブチ切れるバルテュス翁の姿を見ることができました。自分はこの番組は見ていなかったのですが、江國香織の態度に怒っているのではなく、その理由はいかにも孤高の芸術家らしいもので、これを見るとやはりバルテュスの作品は天窓からの採光で鑑賞するべきなんだろうなァ、……と感じた次第です。

最後に本展示の図録ですが、紙質もしっかりしており、また作品写真もコントラストが明瞭で、会場に展示されていた作品の見た目にかなり近いです。また年譜はもとより、東京都美術館学芸員・小林明子の『バルテュスとピエロ・デッラ・フランチェスカ』など、資料としての価値も高いと思います。おそらく今週末は最後ということで激混みだと思いますが、幻想絵画のファンであればマストといえるのではないでしょうか。オススメです。