台湾Music✕Culture TAIWANDERFUL 2015@恵比寿リキッドルーム LIQUIDROOM

台湾Music✕Culture TAIWANDERFUL 2015@恵比寿リキッドルーム LIQUIDROOM

最近、林瑪黛との出逢いをきっかけとして台湾の音楽にハマってい、この勢いで「台湾Music✕Culture TAIWANDERFUL 2015」を聴きに行ってきてしまいました。というわけで、簡単なレポートを。ちなみに立ち見席でライブを見るというのはもう何十年ぶりのことで、音楽は非常に愉しめたものの、肉体的にはかなり辛かったのはナイショです(爆)。

今回の出演アーティストは、盧廣仲(クラウド・ルー)、血肉果汁機(Flesh Juicer)、拍謝少年(Sorry Youth)に加えて、閃靈(Chthonic)から/FreddyにDoris、Jesseの三人が参戦、という布陣でした。ちなみにこのイベントに参加する前にちょっとだけでも聴いておこうかと、血肉果汁機のニュー・アルバム『GIGO』を手に取ってみたのですが、一曲目「帶上血肉」の台湾語による台湾演歌っぽい曲風から一転、次の「瘋狂大老二」ではいきなりのデスヴォイスに恐れをなし、最後まで聴き通すことができませんでした(苦笑)。盧廣仲はPVを探して一聴しただけ、拍謝少年にいたっては時間切れでマッタク音を確認することもなく会場へと足を運んだというテイタラクではあったものの、この予習なしで挑んだのが功を奏してか、会場で聴いた音は新鮮でかなり愉しむことができました。

最初にステージへと登場したのは拍謝少年で、ギター、ベース、ドラムの三人編成。The Police、Rush、最近ではMUSEと三人編成のバンドは大好物なのですが、拍謝少年は三人編成云々よりも、荒々しいギターの音色をガレージロックっぽいベースとドラムが支えるストレートなロックとして愉しめました。サマソニのページでは、その作風を「演奏だけのポストロックと本場の台湾語歌謡を統合した曲」と紹介されていますが、自分が漠然とイメージしているポスト・ロックよりは、スティーヴ・アルビニとかのオルタナティブ系の音に近いというか――。先ほど改めて彼らのアルバム『海口味』を聴いてみたのですが、この音は断然ライブ向きだと思います。

続いて登場したのが血肉果汁機。個人的にはかなり苦手なデスコアなため、耳が痛くなるのがイヤでちょっとだけ会場を離れていようかとも悩んだのですが(爆)、これが大当たり。爆音というよりは音圧が半端なく、またボーカルのGigoがスピーカーの上に片足を乗せて”悠然と”観客を煽る立ち姿がカッコイイ。自分は会場の、階段を上がった後ろの方から眺めていたのですが、ステージのすぐ近くには髪の長い「いかにも」なメタルな人たちが寄り集まってヘッドバンギングをしていた姿が印象に残りました。ステージも中盤へと進むと、彼らは円陣を組むようにして何かの踊りのように(?)グルグルと廻り始めたのですが、この動作、デスコアではお約束なのか、どうか――。しかしステージ前を陣取る彼らが最高にヒートアップするのはこのすぐ後。Gigoの英語による紹介とともに、閃靈のFreddy、Doris、Jesseの三人が舞台袖から姿を見せると、悲鳴にも近い声が(爆)。そしてFreddyの無類のカッコよさ――。Freddyの登場によって、先ほどまで暴れていたGigoが、大先輩に遠慮してか(?)控えめな感じになっていたのがちょっと可愛かったデス。ヘッドバンギングで長髪を靡かせる姿の美しさなど、歌舞伎役者を彷彿とさせるFreddyの立ち居振る舞いの美しさは、まさに堂に入った感じで、ステージ前でのデスコア・ファンたちの怪しい踊りも最高潮に。――しかし血肉果汁機の演奏が終わると、早々に退場してしまったのがまた何とも(爆)。

ひとわたり会場を見廻してみると、思いのほか自分のような中年の男性女性が多いことに気がつきました。血肉果汁機の音を事前に聴いていたことと、このライブはサマソニの前夜祭的な趣向もあって、観客のほとんどは激しい音楽が大好きなヤングばかりだろうと思っていたのですが、とんでもない。かなり多くの観客は、今回のライブでトリをつとめた盧廣仲がお目当てだったのでは、という気がします。

盧廣仲の姿はこのライブが始まる前、会場の二階で行われていた「Cultureの部」で川島小鳥とのトークライブの時に一瞥してい、飄々とした雰囲気から曲風も軽いポップスあたりだろうと思っていたのですが、期待を裏切ってギターは本格、そして彼をサポートするメンバーのテクニックの盤石さと、素晴らしい演奏でした。特にステージの向かって左でキーボードをメインに、トランペットを吹いていたオジさんがヨカッタ。まったく揺らぎのない彼の素晴らしい歌声とギターが曲のメインであることは勿論なのですが、その魅力的な曲風はちょっと陳綺貞にも似ているような、――と思ってざっと調べてみると、デビューアルバムには、鍾成虎がプロデューサとして絡んでいると知って納得した次第です。

盧廣仲のステージが終わっても観客の興奮は冷めやらず、しきりにアンコールを促す拍手が続けられたものの、盧廣仲が舞台袖からそそくさと姿を見せて「サマソニでまた会いましょう」の一言でステージはひとまず終了。このあと、会場でアルバムを購入した人向けの握手会が企画されていたようですが、「Cultureの部」の開場三時半頃からずーっと立ちっぱなしだったロートルの自分は、足腰がすでに限界に来ていたので早々に退却。立ち見のライブの前に「Cultureの部」で散々時間を潰してしまうという戦略ミスを犯してしまったものの、今回のこのイベント、「Cultureの部」と「Musicの部」双方にともに大変愉しむことができました。来年もまた訪れたいと思います。

川島小鳥 『明星』パネル展の様子。盧廣仲とのトークショーが始まる前にちょっとだけこのパネル展の会場に登場。
川島小鳥 『明星』パネル展の様子。盧廣仲とのトークショーが始まる前にちょっとだけこのパネル展の会場に登場。しかしやはりポートレートを「こうした」展示で見ると、楊德昌の『恐怖份子』を思い出します(爆)。