以前紹介した林瑪黛周辺の音楽を色々と漁っていると、良質なアーティストに巡り会うことができるヨ、――というお話。今回取り上げる原子邦妮を知ったのも、林瑪黛が一緒にライブを演るらしいということで聴いてみたのですが、ジャンルは「電音」ながら、背景の音は非常にうまく練られており、一聴しても「電音」という印象は薄く、ボーカル・查查の、The Cranberriesや孫燕姿、王菲などを彷彿とさせる巧みな歌声の素晴らしさが際だった楽曲で堪能しました。
「被你遺忘的森林」を一聴して、まず思い浮かべたのが孫燕姿だったのですが、高低をやや強く残してさりげなくファルセットをかけた歌唱法が共通するとはいえ、查查の声の方が落ち着いた雰囲気を強く残しており、それがまたフルートっぽい音色や優しく鳴っている背景の電子音と非常にマッチしているところに注目でしょうか。このあたりの精妙な調律はこのバンド独特の個性でしょう。
「在__崩壞之後」は霧のかかわったようなトーンの電子音からさゆらぐ查查の歌声がまた素晴らしい。そして打ち込みのパーカッションも気にならず、じっくりと曲を盛り上げていきます。
「再見了麻瓜」は、うーん確かに「電音」、というバックの音ながら(特に打ち込みのリズム)、楽曲の構成は三曲の中では一番ドラマチック。中盤からは、遠くから木魂のように聞こえてくるバックボーカルにエフェクトもかけて背景の電子音がより複雑に変化していく展開がいい。自分のようなロートルだとやはりこの曲、The Cranberriesが歌っていても不思議ではない雰囲気があります(爆)。
本作より前にリリースされている『折桂令』は収録曲も多くフルアルバムの感じなのですが、こちらも近いうちに手に入れて聴いてみたいと思います。