偵探書屋 Muder Inkの店長・譚端氏と冬陽氏のインタビュー映像を見て、”あの文庫本”の謎が解けた――という話

タイトルはまとまりがなくアレですが(爆)、藝想世界のYouTubeチャンネルで「《藝想世界》譚端、冬陽談偵探書屋」と題した映像が上がっているのを見つけました。譚端氏は、少し前の記事「第四回島田荘司推理小説賞レポート@台湾(2) 」で御大のインタビューが行われた場所として紹介しましたが、そこの店長さん。一方の冬陽氏は、「第四回島田荘司推理小説賞レポート@台湾(1) 」でもお伝えしたとおり、授賞式で司会を務めた推理評論家です。この映像の中で譚端氏が色々と興味深いことを話していたので、備忘録変わりに少しだけ紹介しておきたいと思います。

偵探書屋を訪れると、店の奥にはテーブルがあり、そのあたりの書棚には紀伊國屋のカバーをかけられたま日本の文庫本がズラリと並べられています。先月訪れたおり、いったいこれは何なんだろうと思ったのですが、このインタビューで譚端氏曰く、なんでも偵探書屋を始めるときに、ある老婦人から電話があり家を訪れてみると、彼女は三、四百冊はあろうかと思われる日本の文庫本をすべて彼の店に寄贈するという。齢九十五になろうかという彼女は日本語教育を受けた世代ですから、日本の本が読める。しかし日本のミステリ小説に興味を持ち始めたのは八十を過ぎてからで、それから十五年近くでこれだけの本を読んできたのだけれども、最近は眼が悪くなって字も読みづらくなってきた。だったら――ということで、偵探書屋に寄贈することを思いついた……と。

なるほど。書棚に並べられた本を一瞥したときから、誰かが読んだ本であろうとは察しがついていたものの、あの紀伊國屋書店のカバーがかけられた文庫本にそんな逸話があったとは、と感じ入った次第です。

店の看板犬・アガサちゃん。捨て犬だったところを助けられて、今は偵探書屋の看板犬として接客中(とはいえ、インタビュー中は仕事の邪魔をしてはならんということで隣室に閉じ込められていたのはナイショ(爆))
店の看板犬・アガサちゃん。捨て犬だったところを助けられて、今は偵探書屋の看板犬として接客中(とはいえ、インタビュー中は仕事の邪魔をしてはならんということで隣室に閉じ込められていたのはナイショ(爆))

映像では他にも松本清張の小説と日本の戦後社会との関わりについてや、日本と台湾社会とを比較した発言が色々あったりして興味深いのですが、中でもミステリー作品の映像化については確かになあ、と首肯してしまいました。譚端氏曰く、日本のミステリー小説は松本清張や東野圭吾をはじめ、映像化を積極的に進めている一方、台湾の作家たちは書いてしまってハイオシマイで、そうしたメディアミックスについてはあまり興味がないように見える。しかしそれではいけないのではないか、――と嘆いているのですが、確かに台湾ミステリにとってメディアミックスというのは、ミステリーファンの裾野を広げるといういう意味において大きな課題であるかもしれません。しかし台湾ミステリの作家連が映像分野の人脈を持っているかというと、――どうなんでしょう? この点、個人的には島田荘司推理小説賞に関わりながらその後、小説の執筆のみならず映像脚本の分野にも進出している陳嘉振氏と烏奴奴女史の二人に期待したいところではあります。

そのほか藝想世界のYouTubeチャンネルでミステリー絡みといえば、この偵探書屋で行われた御大のインタビューをまとめた映像があるので、こちらも合わせて紹介しておきたいと思います。

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