柯泯薰 DON’T MAKE A SOUND TOUR in TOKYO @青山月見ル君想フ

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昨晩は、青山月見ル君想フで行われた”台湾ポップス界の大型新人「Misi Ke」こと”柯泯薰のライブを青山月見ル君想フへ観に行ってきました。「DON’T MAKE A SOUND TOUR」東アジア大都市ツアーは、11/15の東京を皮切りとして、11/30のシンガポール、12/2のマレーシアを巡るというもの。

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ニュー・アルバム『不能發出聲音』をひっさげての今回のライブはさて、どんなものだったかというと、――もう最高でした。もしかしたら今まで見てきた青山月見ル君想フのライブでは一番凄かったかも知れません。

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まずこの夜のライブは音響がとても良かったのが印象的で、柯泯薰の前に出演したタカハシコウキと久保田光太郎のユニット・peridotsのファルセットも交えたハイトーン・ボイスが会場の隅々まで響き渡るようにしっかり、ハッキリと聞こえていたことにまず吃驚。今回も十一月前半に見たDSPSの演奏と同じ席に陣取っていたものの、ここまで明瞭に楽器の音や歌声は聞こえなかったなァ、――などと思い返しているうちに、peridotsの演奏が終了。

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peridotsの音を聴くのはこの夜が初めてだったのですが、かなり気に入りました。特に二曲目だったかに演奏された「Head to Toe」が素晴らしかったです。この夜は実験的に二人だけで演ってみた、とのことでしたが十二分に堪能しました。

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さて、しばしの小休止を挿んでいよいよ柯泯薰の演奏が始まったのですが、おそらくこの夜の曲内容は、『不能發出聲音』の構成をトレースしたものだったのではないかと。実を言うと『不能發出聲音』はここ最近、予習も兼ねてドライブがてらに聴いていたものの、今一つピンとこなかったのです。

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陳綺貞や魏如萱といった台湾ポップスの王道路線を彷彿とさせる可憐で巧みな歌唱に、彼女自身が演奏するギターが重なるという曲構成は、確かに聴かせるものの、アルバム全体を通しても今一つ全体の輪郭がはっきりしないというか、――そんな印象があったのもまた事実。

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しかしこの漠然とした感覚は、この夜のライブで完全に払拭されることとなりました。なるほど、アレはコレで、これが――と、全体の構成や不思議な曲展開など、あのアルバムの要所要所に感じた疑問は、実際の演奏を目の当たりにして腑に落ちることとなった次第です。

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つま弾かれるフォークギターの音色と彼女自身の歌声をメインに”聴かせる”よう編集されたアルバムに比較すると、この夜のライブは、彼女のパフォーマンスを前面に押し出しつつも、メンバー全員の技巧が際だつ演奏だったように思います。なかでも特筆すべきは、大偉こと劉哲麟のギター(リッケンバッカー!)でしょう。「引起貓的注意」におけるサスティーンの効いた美しい音色は、シガー・ロスを彷彿とさせる素晴らしさで、彼女の歌声を引き立てていきます。ちなみにこのギターの音、アルバムではここまで前面に出ていません。実際の音を耳にして、大偉のギターのバランスは本来、こうあるべきだったんだなァ、――と感じましたね。

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この夜のライブでもう一つ注目すべき点は、ボーカルとギターを担当する柯泯薰の、シアトリカルなパフォーマンスでしょう。「石頭與石頭之間的對話」での会場を包み込む爆音ノイズに度肝を抜かれ、赤い照明に塗り込められたステージで演劇的な独白を見せたかと思えば、白いギターを通信機に見立てての一人劇の可憐さなど、アルバムを聴いているだけでは決して伝わらない彼女の突き抜けた個性をタップリと堪能することができました。

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しかし上にも述べた「石頭與石頭之間的對話」におけるノイズの洪水には完全に魂を持っていかれてしまいました。陳綺貞や魏如萱のような台湾ポップスに聴きにきた筈が、Merzbowだった、――というような衝撃(そんな喩えではよくワカランという方は、Merzbowの『Pulse Demon』あたりを想起してもらえばよろしいかと)。

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何でも彼女は会場に持ち込んだテープレコーダーでそのときその場所の「音」を蒐集しているとのことで、新たに集められた音源は次のライブで活かされるとのこと。ミュージシャンというよりは、現代芸術家めいた振る舞いのようですが、実際、彼女は独学でギターを習得する前に北京でダンスパフォーマンスを勉強していたということですから、様々な手法を通して「表現」するのが彼女のスタイルで、ギターの演奏も、歌も、そして演劇的な舞台も含めたすべてが柯泯薰という強烈な個性ということなのでしょう。

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今回の衣装やメイクも日本のものということで、youtubeやネットで見ることのできる写真とは違った雰囲気で魅せてくれました。そして文句なしに可愛いッ! 

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「台湾ポップス界の大型新人」による”台湾ポップス”は、前衛と叙情が美しく交錯する驚くべきものでした。そういえば『THE VERSE』や陳綺貞の現時点における最新アルバム『時間的歌』も、ファーストへの原点回帰のように感じた『太陽』に比較すると、かなり実験的な内容だったし、メジャー・シーンの軛から解き放たれた”台湾ポップス”は、自分の想像している以上に、遙か先を突き進んでいるのかもしれません。

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台湾ポップスに”優しい、甘い、キュート”といった印象しか持たれていない方が目の当たりにすれば卒倒すること間違いナシというほど衝撃的にして大感動のステージでしたが、台湾ポップスのみならず、自分のような偏屈なロートルのプログレ・マニアには没問題。再来日を是非! と祈念しつつ、このあたりで筆をおきたいと思います。おしまい。

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