夢探偵フロイト: -マッド・モラン連続死事件- / 内藤 了

 

新刊が出るのを心待ちにしている「よろず建物因縁帳」の作者・内藤氏の新シリーズ(の様子)。全体的な結構は、「よろず建物因縁帳」をほぼ踏襲しており、興趣は変わらず。怪異が夢へと置き換えられ、それを曳き屋ならぬ夢探偵の教授たちがその因縁を解きほぐしていく、――という物語。

あらすじは、単位が取れなくて卒業ヤバイ、ということになったペコちゃん似のヒロインが、とあるアドバイスで怪しげな夢の研究をしている教授の手伝いをすることに。夢をリアル映像につくりかえる仕事をしているヲタ男も交えた教授との三人が、夢の中に出現する怪物・マッド・モランの正体を暴き立てる――。

ペコちゃん似のヒロインには「よろず建物因縁帳」の春菜とはまた違った可愛さがあり、ヤング向けの小説らしい風格も興味深いものの、やはり本作最大の魅力は、複数の人物が同じ夢を見る理由が過去の事件と因縁を辿るうちに明かされていくという、本格ミステリにおけるミッシング・リンクの謎解きにも似た展開でしょう。夢に見た情景をそのまままリアルな映像で被験者に見てもらい、さらに徹底したリアリズムをくわえていくことで、その夢の場所が現実にあるものと特定されていくところや、信州の地の利を活かした推理の誘導などは、怪談の因縁を辿っていくホラー小説らしい見せ方ながら、そこに心理学的な知見をしっかりと添えて説得力を持たせた趣向が好感度大。

「よろず建物因縁帳」では実際に怪異はあるものとして、幽霊に取り憑かれて殺されるものが続出するわけですが、怪異はあくまで一つの現象として現実的な解が与えられるところが本作の違い。夢の場所が特定され、その夢の情景と複数人物証言の齟齬から浮上してくる、登場人物のそれぞれの内に秘めた心情や懊悩を丁寧に描き出す筆致はまさに作者の真骨頂で、おぞましい夢を生みだしていた登場人物たちのトラウマが、ペコちゃんたちの調査と謎解きによって癒やしへと転化される後半の展開も期待通り。

「よろず建物因縁帳」の作風をより若々しくヤング向けへと書き下ろした一冊としても十分に愉しめる本作、ヒロインやオタクのエンジニアであるヲタ森など、個性的なキャラ構成からしてシリーズ化はまず確実、次作も持して待ちたいと思います。自分のような「よろず建物因縁帳」のファンもしっかりと愉しめる逸品といえるのではないでしょうか。オススです。

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