久しく小説を読んでなかったため、長い間このブログを更新せず、すっかりご無沙汰してました。色々と理由や事情があるのですが、体調も良くなってきたし、少しずつ記事をアップしていこうと思います。
いきなり本格ミステリ周辺の本をあげていくのもアレなので、まずはこちらから。小説を読んでいなかった時期に『漫画 ゆうえんち -バキ外伝-』を読んでどハマリし、こちらを1巻、2巻と読了したあと、どうしても続きが待ちきれず本作にまで手を出してしまった次第。
漫画の方では、主人公のボーイが久我重明の“仕事”に割り込むかたちで物語が始まりますが、小説の方はかなり構成が異なってい、逸話の方は過去現在と相当シャッフルされている様子(実はこの小説版は5巻まであるのですが、すでに読了済)。このあたりは板垣恵介版『餓狼伝』と同じなのかもしれません。
あらすじとしては、最強死刑囚編で登場した柳龍光を捕まえた主人公の少年が彼と死闘をし、捕まえるまでの成長譚。主人公の少年は『バキ』に登場する空手家のある人物とは血縁関係にあり、その(育て)親とも因縁があったり、――というふうに外伝らしくそのマンマ『バキ』の登場人物も大きく絡んではいるのですが、『餓狼伝』の夢枕獏ワールドともかなりの部分で重なっているため、『バキ』のみならず獏御大のファンであれば相当に愉しめるのではないでしょうか。
本作『1』では、主人公こと葛城無門の背景がまず語られ、そのあと漫画編とのオープニングとなっていた久我重明とプロレス野郎たちとの喧嘩にボーイが乱入、そこから師匠となる松本太山との出会いを経て、後半はいよいよ柳とその師匠とも因縁のある凄腕の人物が登場、柳がタイトルにもある「ゆうえんち」に出場する準備を行うまでの経緯が描かれています。
前半の松本太山との出会いは、現在発売中の漫画編『2』でシッカリ描かれていましたが、個人的には松本よりもチラッと登場した磯村露風がトテモ気になる。自分は『餓狼伝』は板垣恵介と谷口ジローの漫画しか読んでいないので、この人物の詳細は不明。ただ飄々としてるのに激強、というあたりのキャラ立ちが凄い。
柳は「最強死刑囚編」でもかなり異様・奇怪な人物で、個人的には最強死刑囚の中では一番のお気に入りなのですが(時点でドイル)、本作でも章題に“超高層の黒蜥蜴”とある通りの奇人・変人ぶりを見せつけてくれます。ただ漫画編の『2』ではまだ登場していない“スキンヘッドの妖怪”こと神野仁というのも相当恐ろしい人物で、柳を宿敵とし、このシリーズの後半では柳と凄まじい死闘を繰り広げるので乞うご期待。
すでに漫画の方を『2』まで読了しているのであれば、巻の三「スキンヘッドの妖怪 神野仁」から読み始めても没問題ですが、獏御大の切り詰めた文体から醸し出される男漢ワールドの臭気がムンムンと漂う小説世界も素晴らしいゆえ、明快な漫画で描かれた画像と小説とを比較してみるのも一興でしょう。
漫画『ゆうえんち』が存外に面白くて(下手をすると、本家『バキ』の現在(相撲編)よりこっちの方がスキ!)なんて感じられる方であれば必読でしょう。オススメです。