『夢探偵フロイト: -マッド・モラン連続死事件- 』に続くシリーズ第二弾。前作ではあまりハッキリしなかった探偵役の過去がサラリと明かされていたりと、なかなか興味深い展開になってきた一冊で、今回も悪夢を絡めたコロシを扱ったもの。前作との違いは悪夢の解明よりは、物語全体を眺めると殺人事件が中心軸にあるような印象で、物語も奇妙な溺死体が発見され、そのコロシがフロイトたちのところに持ち込まれた悪夢とどう絡んでいくのか、――というのが前半の見所のひとつとなっています。
ちょっと頭の悪そうなれいのヒロインがコスプレしてティッシュ配りのバイトをするという、――漫画・アニメ映えしそうなシーンを冒頭に配してい、これが単なるファンサービスかと思っていたらさにあらず、その後に展開される連続猟奇事件のミッシング・リンクを繋ぐ重要な要素となっていく趣向が面白い。
とある会社をパトロンとして、フロイトの研究所が枕の開発を行うところから、その会社の社長令嬢の悪夢の正体を解明していくうち、現在進行形の連続殺人事件の背景が浮上してくる展開はミステリらしく、過去の因業が炙り出されてくる後半は、ヒロインのあかねチャン危機一髪的な盛りあがりを見せたりと、前作以上にマンガ・アニメ的な見所が数多く鏤められているところも好感度大。
それにしても、本作の白眉はやはり探偵役となるフロイトがなぜここまで夢の研究に没頭しているのか、その目的と宿業が明らかにされたところでありまして、果たして物語がシリーズ化して進むうち、彼の思いは達成されるのか、そしてそれはどのような形を取るのか、大いに気になるところであります。
前作ではシリーズ第一弾ということもあって、『よろず建物因縁帳』から作者の存在を知ることになった自分としては、『よろず』がアダルトだとしたら、こちらはもう少しヤング向けのライトに仕立てたシリーズだから適当にスルーでもいいかなァなんて感じていたものの、探偵フロイトの今後と、彼がライフワークとして取り組んでいくであろうこの謎に、ちょっと頭の弱そうなあかねがどう絡んで(巻き込まれて)いくのか、そしてフロイトの右腕たるヲタ森君がどうアシストしていくかなど、こちらも『よろず』と同様、登場人物たちの今後の活躍に目が離せません。
ただやはり個人的には『よろず』の新刊の方を待ち焦がれているのもまた事実、……とアマゾンを何気なく眺めていたら、『よろず』の新作『魍魎桜 よろず建物因縁帳』が一月中には刊行予定とのこと。あらすじに目を通すと、
土地を支えていたのはミイラ化した人柱だった。
漆喰の繭に包まれた坊主の遺骸が発掘されると同時に、近辺では老婆の死霊が住民を憑き殺す事件が多発。
曳き屋・仙龍と調査に乗り出した広告代理店勤務の春菜が見たものは、自身を蝕む老婆の呪いと、仙龍の残り少ない命を示す黒き鎖だった――!
ひそかに想いを寄せる仙龍のため、春菜は自らのサニワと向き合うことを決意する。
春菜のファンたる自分としてはこっちの方が断然気になることしきり。ともあれ本作、『魍魎桜』の繋ぎとしてはまずまず作者のファンも満足できる仕上がりの一冊といえるのではないでしょうか。
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