『どこの家にも怖いものはいる』の続編となるシリーズ第二弾。内容はというとタイトル通りで、猟奇者にしてマッドサイエンティストの人物が、曰くつきの物件を集めてつぎはぎの邸宅をつくりあげる。大金を払ってそこに人を住まわせ怪異の出現を記録させるのだが、――という話。
「黒い部屋」「白い屋敷」「赤い医院」「青い邸宅」とそれぞれに色がついてい、記述者が次第に狂っていく「黒い部屋」、リアリストであるべき作家が次第に怪異を受け入れていくプロセスの背後に見え隠れする彼と屋敷の繋がりが怖気を誘う「白い屋敷」、すっ、ふっと現れるさりげない怪異の情景を音声記録によっていいようのない恐怖へと換える「赤い医院」、そして怪異の正体を科学的に突き止めようとするも呆気ない幕引きに隠されたある人物の正体にぞっとなる「青い邸宅」と、それぞれに趣向を凝らした恐怖がブチ込まれていて飽きさせない。
もちろん怪異の記録の外枠にいる語り手の作者と編集者の三間坂の二人にも、次々と不気味な怪異が降りかかるのですが、今回は実在の人物のはずであるべき外見も気持ちワルイ女がふらっと出現し、すわご対面となりかかるサスペンス風味を交えた後半の展開が秀逸で、作者じしんがこの忌まわしい屋敷の正体を解説していくうち、女の受難から逃れたものの、その裏で語られた屋敷の正体が宙づりにされる真相が謎を生む幕引きにはゾーっとなること請け合い。
かりにここで語られた解釈が真相だとすると、実際に出現した怪異はいったい何だったのか、そしてこの屋敷に関する記録がいくつも残されているのはなぜなのか、――次々と沸き起こる疑惑に答えを見いだすことはかなわず、物語は腑に落ちないままジ・エンド。
次作のタイトルが『そこに無い家に呼ばれる』で、本作で語られた屋敷の正体がアレだとすると何とも意味深に感じられるのですが、はたしてどうなのか、――すでに積読状態になっている『そこに無い』も、時間が空き次第取りかかってみようと思います。