放課後デッド×アライブ / 藤 ダリオ

放課後デッド×アライブ  / 藤 ダリオ何だかダメダメと貶めながらも結局は出るたびに買ってしまっているというダリオ本。前作の『貞子』はノベライズだったのでスルーしましたが、今回は『出口なし』をはじめとする一連のサバイバル”ダメ”ホラーだったためゲットした次第。結論からいうと、ダリオ本の中では現時点での最高傑作カモしれません。

物語はだいたいどれも同じようなモンなのですが、一応簡単にざっとまとめておくと、フツーの高校生たちが忘年会をやっている最中に突然、体育館に監禁されることに。で、またたま例によって突然さあゲームのはじまりですと告げられるや、非情な殺人ゲームが開始され、――という話。

こうした結構の物語でキモとなるものを三点挙げてみると、まず挿入されるゲームの質と、次には登場人物達がサバイバルゲームに巻き込まれることになった理由を謎として牽引していき、最後に明かされる真相の驚き、さらにはゲームが展開されていく中での裏切りや駆け引きなどの人間ドラマにあるわけですが、まず最初に言及するべきは本作に描かれているゲームのクオリティの高さでしょう。

もっとも前半はちょっとぬるーい筋運びでダメ小説のダリオ健在なりと、ダメ小説読みの視点から読み進めていったのですがアラ不思議。後半の神経衰弱戦に突入するや、ペアを組まされることになったボーイとガールの駆け引きが綴られ、そこに裏切りやゲームの主催者の思惑を推理していくという趣向が凝らされていき、福本漫画ほどの高みにはいたっていないものの、緻密な展開で魅せてくれます。

もっとも演じているのが高校生ゆえ、そこに男女の恋愛も絡めたドラマが流れ出すととたんにダリオワールドらしい陳腐な臭いが鼻につきはじめるものの、そのあたりはご愛敬。登場人物たちのかき分けについても、こうしたサバイバルホラーの系統にしてはハーフのボーイを配するなどしてしっかりとした気配りがされてい、さらにサバイバルの鍵を握る女たちのしたたかさがピュアすぎるボーイたちを翻弄するという青春小説ならではの定石もしっかりと活かしてあるあたり、まず小説として格が上がった印象さえ感じさせます。

『出口なし』では、デス・ゲームの真相で見事な投げっぱなしジャーマンをキメてくれたダリオ氏ですが、今回は驚愕、――というか、あまりのアレっぷりには顎が外れるくらい(ウソ)驚いてしまいました。もっとも、学校にいたボーイとガールが突然異次元めいた世界へと飛ばされ試練に巻き込まれるという結構に、小学生たちが登場人物の『漂流教室』ならぬ、小学生が描いた『漂流教室』っぽいなァ、……という気はしていました。実際、そうしたゲスの勘ぐりは当たらずも遠からずで、このボーイたちに課せられていたゲームの真相の背景にあったものが「地球最後の日」だったというオチは完全に厨二病。大方のマトモな本読みであれば、最後にふざけるなッと壁に叩きつけること間違いなし、「へー……その手があったか。よしッ!おいらの芥川賞候補となる予定の新作(文芸社から刊行予定)は、このオチをもっと膨らませて……」なんてあさっての方向に思考を働かせることができるのは、この小説の作者くらいではないかと。

作中に挿入されるゲームのネタが最高なら、ゲームに巻き込まれることになったその理由のダメっぶりも最高という、良い意味でも悪い意味でも最高づくしの一冊ゆえ、自分のような好事家で、ダメと知りつつもついつい……なんていういうダリオマニアであれば、スルーは御法度。ダリオ本の中では一番話の展開がうまく、またその真相が激しくアレというギャップも含めて最高であり最低という本作は、もっともダリオらしさを体現した氏の最高傑作といえるのではないでしょうか。オススメではありますが、いうまでもなく取り扱い注意ということで。