今日はSIGMA DP2 Merrill使いである江口氏の個展を見に行ってきたので簡単ながら感想を。自分はGXRのA12 50mm を使われていたころからの氏のファンで、以前からこっそりブログやFacebookを覗いていたのですが、プリントを直に見るのは今回が初めてであります。個展のタイトルが「Life is beautiful -光の森-」とある通りに、大胆に光を取り入れた作品が大部分を占める作風は、GXRからときおり使われていた氏の白飛びならぬ白飛ばしの技法をさらに深化させたもので、想像していた以上に素晴らしいものでした。
モチーフのほとんどは樹木や木立で、そうした画面の一部に太陽を入れている構図といえば、まず見るものの視線を惹きつけるのは白く飛ばされた光輪であり、その輪の周囲を緑や紫といったとりどりのフレアやゴーストが覆っている――その祝祭的ともいえる色彩感覚がいい。しかしさらに踏み込んで写真の全体を見つめていくと、白く飛ばされた光輪とゴーストから木立を描きだす微細なトーンへと変化していくありさまを愉しむことができます。
光輪から樹木が生成されていくかのようなこの躍動感溢れる構図全体も十分に素敵なのですが、それぞれの写真にタイトルはないので、ここでは会場の左奥に飾られていた写真とを例にあげると――その一枚の場合、光輪は構図の上方に配置され、トーンの連なりから生成される樹木の描写は下に流れるにつれて明瞭さを増していきます。周辺部の描写が柔なレンズであれば全体が破綻してしまう構図ですが、さすがDP2 Merrillといったところでしょうか、構図の最下方がもっとも解像されており、豊穣なトーンの連なりが描き出すこの一枚は、DP2 Merrillの底力に支えられ、モチーフの美しさをもっとも際立たせた逸品といえるのではないでしょうか。正直、この一枚だけでもかなり長い間ジーッと見つめていました(爆)。
で、ちょっとだけ江口氏と話をすることができたのですが、シャッターを押す瞬間についての意識や、被写体にする視線の持ち方など、個人的にはかなり興味深いことを聞くことができました。自分は、江口氏の写真に藤原新也と松本典子にも通じる何かを感じるのですが、それは何なのか、――その答えを見つけることができたような気がします。まあ、この答えについて書くのは野暮なので、是非とも皆さんの目で江口氏の作風の神髄を確かめていたたければと思います。
静かな裏通りにこじんまりと佇むギャラリーは銀座やほかの場所とは異なり、今回の作品群にとても合っていると思いました。写真展は来週の日曜、十七日まで。