第三回島田荘司推理小説賞受賞式典レポート@台湾(1)

これから数回にわけて九月六日に金車文藝中心で開催された第三回島田荘司推理小説賞受賞式典と、今回の訪台に関するレポートをまとめていきたいと思います。まず今回の受賞作は、皇冠の公式サイトでもすでに発表のあった通り、台湾は胡杰の『我是漫畫大王』と、カナダは文善の『逆向誘拐』の二作となりました。三作のうち、二作のいずれを受賞作とするべきか御大は直前まで考えていたと漏れ聞いていたので、ダブル受賞について個人的には納得だったりするのですが、この二作は作風も大きく異なるところが興味深い(入選した三作については後日感想をブログにあげたいと思います)。

式典の会場は金車文藝中心で、最近は台湾推理作家協会のイベントなども行われていることから、台湾のミステリファンには結構有名な場所だったりします。一階二階はブラウンコーヒーの店舗となっており、建物を入ってすぐのところにあるエレベーターで三階に上がるとちょうど式典の準備が行われている最中でした。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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オープニングにモダンダンスが披露されていた第一回、第二回と異なり、今回はマジック。演じるのは子役からマジシャンへと転じた浩浩氏。演し物は四つあって、入選作をモチーフにしたものが三つと、最後に御大自らが壇上に上がってのものが最後にひとつという構成でした。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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まず最初の演し物は『我是漫畫大王』。作者の胡杰氏がいわれるまま紙に自分の名前を書き、それを手渡すと、マジシャンは折りたたんだ紙をビリビリと破ってしまいます。しかしそれにふっと息を吹きかけるとアラ不思議、破かれた紙片は『我是漫畫大王』の表紙画に変わっている、――というものでした。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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続いての演し物は『見鬼的愛情』で、この作品で大きく取り上げられている鬼(幽霊)の趣向を活かしたもの。クロスのかけられたテーブルに蝋燭をおき、その炎に念を入れると、鬼が降臨し、テーブルがひとりでに浮かび上がります。続いて作者である雷鈞氏も壇上にあがり、マジシャンと二人でテーブルに手を添えると、テーブルがゆらりゆらりと宙を舞います。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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三作の最後を飾る『逆向誘拐』の趣向はズバリ”お金”。作者の文善氏から受け取った紙幣を、マジシャンがグラスに入れられた水に浸し扇子で風を送ると、紙吹雪とともに小さなお札がひらひらと掌から現れる、――というものでした。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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最後は御大を壇上に迎えての透視術で、まずトランプの中から御大が一枚を選び、それをマジシャンには見えないよう、会場の皆に確認してもらいます。その一枚はジャケットのポケットに入れたままとし、マジシャンが手にしていたトランプケースに何かを据えると、それが写ルンですに早変わり。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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壇上の御大には、トランプを手にしてそれを見つめている姿を演じてもらい、マジシャンがその姿を激写すると、トランプケースからはするするとポラロイド風の写真がはき出されて、――というもの。そしてその写真には件の一枚が移っていて、というのはお約束。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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皇冠の平雲社長、金車文藝中心執行長・袁金徳氏の代理人による協賛者挨拶のあと、二次選考の選評と表彰があり、御大からの祝詞がありました。このときにはまだ受賞作がどの作品であるかは伏せられています。文章の巧拙や細かい部分の揚げ足取りなど細部をあれこれと指摘する減点法の功罪や、創作においては豊穣な実績と歴史を持つ日本と異なり、そうした経験のない華文だからこそ今まで見たことのないような傑作が期待できる、――といったことを話していて、うーむ、これは録音してテープ起こしをするべきだったと激しく後悔。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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受賞作の発表のあと受賞者の二名が壇上に上がり、定番の記念撮影となりました。受賞者の言葉ですが、二人とも感謝の言葉が長い(爆)。個人的には、家族持ちでリーマン仕事に励みつつも創作に邁進する『我是漫畫大王』の作者・胡杰氏の言葉には、同じリーマンとして頷くことしきりでありました。

SONY NEX-7 + Metabones Speed booster +  CONTAX Vario-Sonnar T*
SONY NEX-7 + CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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ちなみに会場には入選者のほか、一次を通過した作者たちも来ていました。そのなかの一人、『熱望的人』の作者である王稼駿4氏の写真をあげておきましょう。二次選考の講評によると、『熱望的人』は道尾秀介を彷彿とさせる作風の物語とのことでしたが、「道尾秀介、読んだことある?」という質問には「あんまり興味ない」との言葉。何となく顔の雰囲気が歌野晶午に似ていると感じたので、「歌野晶午とか読む?」と聞くと、「それ、誰?」との返事。うーん、大陸の創作者の偏食ぶりは自分の想像を超えています(爆)。ちなみに彼が創作を続けていく上で興味を持っている作家は天童荒太とのことで、彼の作風、物語の構成法などについて色々と聞かれたのですが、うーむ……。

SONY NEX-7 +  CONTAX Vario-Sonnar T* 35-70mm F3.4
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寵物先生や陳浩基氏とも再会でき、最近の創作状況などを聞くことができたのですが、順調に作品を刊行している陳浩基と比べると、日本の読者として気になるのはやはり寵物先生の方でしょう。答えは、――まあ、期待してよろしいかと(苦笑)。

式典の翌日は、同じ会場で御大の講演会があったのですが、これについては次回にまとめてみたいと思います。というわけで、乞うご期待