植田正治の道楽カメラ@Atsukobarouh

植田正治の道楽カメラ@Atsukobarouh最近は植田正治といえば都内の小体な展覧会で見る機会が多いような気がするのですが、今回もまた回顧展のような大規模なものではなく、渋谷はBunkamuraの隣にあるビルでひっそりと開催されているもののの一つ。初見の作品も多く、なかなか面白かったです。

Atsukobarouhを訪れるのは初めてだったのですが、ワンドリンク代の500円を払ったあと靴を脱いで入るところが変わっています。全体は白いトーンで統一されていて、ところどころに採光を凝らした見せ方はなかなかリラックスできました。作品の方はというと、「家族をモデルにした初期のモノクロ作品、時折訪れた東京渋谷の街角、ファッション誌の子供写真など未発表作品を中心に、写真作りのプロセスを交えながら公開」とある通り、初めはポスターにもなっている可愛い奥さんのモノクロ写真や家族のものが中心で、タンギー風の幻想的な構築美が際だつ作風のものは少なく、スナップが中心の展示となっていました。

「時折訪れた東京渋谷の街角」のスナップに関しては、やや暗いトーンでまとめたプリントも散見され、ちょっと意外というか。「写真作りのプロセスを交えながら」というところでは、作品の合間に当時の植田がどういう境遇にあったのか――たとえば妻の死をきっかけに創作の意欲を喪失してしまったことなど――の説明が添えられてい、それらの背景を理解しながら作品と対峙するという見せ方を採っていました。スナップの技法とか、そのあたりの技術的なプロセスを期待するとやや肩すかしを食らうことになりますが、これはこれでなかなか興味深かったです。

ファッション誌の子供写真は初見で、これがちょうど会場の真ん中、ドリンクを飲みながら寛げる大テーブルを配したスペースの前に展示されていて、気配りの行き届いた空間づくりには関心至極。

渋谷ということで見に来る人はエッジなヤングばかりかと思っていたら、平日の夕方ということもあってか、自分のほかは老夫婦だけという(苦笑)。上にも書いたようにかなり落ち着ける場所なので、あまり人のいない平日の夕方あたりに訪れて、作品を堪能しつつ、珈琲を飲んでマッタリ、――なんていう愉しみ方がよいのではないでしょうか。渋谷という立地から自分のようなロートルはちょっとビビってしまうかもしれませんが、ご心配なく。来月の十七日迄。