純然たる写真集ではなくフォトブックながら、カメラマンは細居幸次郎、小池伸一郎、三輪憲亮、横山マサト、藤本和典と数人を揃えて、なかなか素晴らしい写真で魅せてくれます。特に藤本氏が撮影した和服姿の川口春奈は、巧みな光のまわし方も相まって大変よろしい(爆)。アマゾンのレビュアー的な視線から見た”実用的”な写真はほとんどありませんが、長野博文氏の手になる前二冊の写真集では見られないポーズや彼女の姿も愉しむことができるお得な一冊といえるのではないでしょうか。
表紙は箱根の温泉につかった川口春奈のアップ写真ですが、このロケのショットは巻末にまとめられています。体にバスタオルを巻いたショットではありますが、一応、キチンと素肌をさらした全身像も交えて、湯あがりの火照った顔のアップやバストショットなどもおさめられているのですが、――直情的なヤングにはチと刺激が足りなさすぎるかもしれません(苦笑)。そうした写真を期待するのであれば、やはり『 haruna2 』を手に取るべきで、本作では各地に赴き、様々なことに挑戦してみせる素顔の川口春奈を堪能するのが吉、でしょう。
雑誌『B.L.T』に連載・掲載されたものを主にまとめたとのことですが、連載第一回目のインタビューで「動物とふれあう企画もいいな」という彼女に、スタッフが「首からヘビをぶらさげる」という内容を提案するも「それはムリムリ(汗)」といっていた彼女に、早くも連載四回目にして、群馬県の「ジャパンスネークセンター」へと連れていき、まさにその提案通りのことをやらせてしまう悪ノリぶりがこれまた大変よろしい(爆)。ボアヘビを左肩に下げつつ首を竦めて体を硬直させた彼女が涙目になっているところも、カメラはシッカリととらえており、Sっ気のあるマニアであれば、この写真だけでもかなり満足できるのではないでしょうか。なお、小さいスナップながら、この写真の前か後かに撮影されたとおぼしき、ヘビに巻きつかれて顔をひきつらた写真も収録されているのでお見逃しなく。
また本作では、Special gravureと題して、上にも紹介した箱根温泉での写真と、韓国でのロケ写真が掲載されているのですが、敢えてロケ地に韓国を選び、彼女にチマチョゴリを着せるという無理筋なグラビアはかなりの問題作。チマチョゴリの似合わなさに苦笑しつつ、やはりここはベトナムロケでアオザイだろッ!とツッコミを入れつつ、軽くスルー。
今回収穫だったのは、川口春奈が意外にも和服姿の似合う女性であったことで、個人的に和服姿の似合う女性は撫で肩という印象を持っていたため、どちらかというと怒り肩に近い彼女が和服を着ても、……と感じていたのですが、藤本氏が撮影した連載17回の「晴れ着でお正月②」と連載30回となる「晴れ着でお正月③」は素晴らしいの一言。
この二回とも定番の”見返り美人”のポーズを川口春奈にとらせているのですが、これによって彼女の怒り肩のラインを隠し、連載17回の写真では髪を下ろすことで、また連載30回の写真では、衣紋をしっかりと抜いてみせることで、首から肩への稜線をなだらかに見せている工夫が素晴らしい。またこの二回ともに、光のまわしかたが非常に巧みで、上にも述べたように頬や唇の色味が大変艶っぽく感じられます。同じ和服姿で、着物と和服という違いはあれど、連載23回の「神社で願掛け」の細居氏の写真と、上に述べた藤本氏が撮影した写真の風格を比較してみるのも一興でしょう。
ソフトカバーで、前二冊の写真集に比較すると、ページ数は物足りなく感じられるものの、小さいスナップも含めれば、収録されている写真は結構なボリュームでその点でも費用対効果を狙える一冊ゆえ、川口春奈に興味はあるけど、イキナリハードカバーの写真集はちょっとなあ、……という方にもオススメできるのではないでしょうか。