呪怨 終わりの始まり / 大石 圭

呪怨 終わりの始まり / 大石 圭『呪怨』のノベライズといえば大石圭、――というわけで、先日の『堕天使は瞑らない』に続いてまたまた大石氏の作品の感想を。正直、『呪怨』のノベライズにおいては物語の骨格や展開などどれも同じようなもので、映画ではヒロインが誰で、彼女がどんなフウにヒドい眼に合うのか、……ほとんどの読者や観客の関心もそのあたりにあるのではと推察されるわけですが、一応映画の予告編を見る限りでは、訳ありクラスの担任をまかされることになる女教師の結依役が佐々木希で、顎をむしり取られたり、顔に大火傷を負って死に至る娘ッ子たちの中に生意気なトリンドル玲奈がいるところに要注目でしょうか。

作品の結構としては、まず冒頭のプロローグで伽椰子の独白によって彼女の過去がさらりと語られるところなど、あとがきで作者の大石氏も書いているとおり、格別な伽椰子愛が感じられるところが素晴らしい。物語は佐々木希がヒドい眼にあう現在篇と娘っ子たちが奈落へと落ちていく過去篇が絡み合っていくカンジで進められていくのですが、一応転調も添えてクライマックスへと持って行く展開では佐々木希とその恋人が過去の事件の真相へと近づいていくサスペンスを添えた結構がいい。

正直、娘っ子のシーンでは、怪異というよりはもう、異世界を操る『呪怨』世界のやり過ぎぶりが相当にアレ(爆)。呪いに絡め取られた娘っ子たちが怪異に襲われてフと気がつくと異世界に放り出されていた、――なんていう展開は『エルム街』もかくやという突飛な発想で、ボワーッと俊雄君が後ろに突っ立っていた、みたいな『女優霊』『呪怨』『リング』といったジャパニーズホラー的な暗さよりは、懐かしの洋物ホラーをもリスペクトして新たな『呪怨』伝説を築いていこうとする制作者側の意気込みを感じさせます。

今回は、うずまきや奇妙な歌など、定番の「あっ、あっ……」だけではなく、恐怖の象徴となるモチーフを作中のシーンに鏤めて、各の恐怖に一貫性をもたせていこうとする試みが新機軸。奇妙な歌は映画を見ていないためどんなかんじなのかは不明なのですが、――仮に予告編でチョロッと流れていた鬼塚ちひろ姐の声のアレであるとするならば、なかなかいい雰囲気に仕上がっているような気がします。恐怖を盛り上げる要所でこの唄が入るという演出は、アルジェントの『サスペリア2』を彷彿とさせるし、そういえば、娘っ子の一人が顔に大火傷を負ってご臨終という死に方はこれまた『サスペリア2』のあのシーンにも通じる気がします。

なお、映画ではどうなっているか不明なのですが、娘っ子がヒドい眼に合うシーンにはもれなく「あわわわっ……」と声を震わせながら失禁するという、――お漏らしマニアが多いと推察されるエロミスマニアにはタマらないくすぐりが用意されているところがタマりません。とはいえ、……女子高生のおもらしときいて思わず生唾を飲み込んだ諸兄に水をさすようでアレなのですが、予告編を見た限り、トリンドルが失禁する可能性はかなり低いような……。いえ、あの床上を引きずり回されているトリンドルが本作におけるあの女性だとしたら、という話ですが。

『まあ、いいっていいって。俺っちはトリンドルよりも佐々木希派だから』という諸兄にもこれまた残念なお知らせなのですが、本作を読む限り、「あわわわっ……」はあるものの、映画で佐々木希が失禁する可能性は限りなくゼロに近いのではないかと。少なくとも本作の中で、俊雄がボワーっと出てきても伽椰子が「あっあっ……」といつもの声で出現の予告をしながらズワーっと出てきても、佐々木希役の女性は失禁には至っておりません。教師役ということもあって清楚なスーツにパンストという、失禁マニアであれば高得点の衣装をまとっているとはいえ、やはりそこはアイドル。『ささきき』で美しい下着姿を披露しようとも、失禁ともなればやはり「一線を越える」覚悟が必要ということなのでしょう。

……と、やたらと失禁への言及が多くなってしまいましたが(爆)、大石氏の伽椰子に対する愛情が感じられるあとがきもついていてお得感が高い本作、自分のような氏のファンであれば、まずマストといえる一冊ではないでしょうか。オススメです。