前回のエントリである「成城学園創立100周年・成城大学文芸学部創設60周年記念講座「成城と本格推理小説」第二回「映画『幻肢』が完成するまで」@成城大学 その3」の続きです。これで藤井監督の講演部分のテープ起こしは終わりです。
藤井: で、ですね、そのときにトラブルはつききものっていうことがありまして、自分で編集を買って出たということの――この画面って多分、全然見慣れないと思うんですけれども――書いてあるのは「マスタリングをエンコード中」――これ、完成した作品を自分のパソコンで書き出していたときだったんですけれども、予測残り時間が625716。これって62時間57分16秒って書いてあるんですけれども、90分の映画なんで、そんなにかかるわけないんです。二時間ぐらいなんですけれども、先ほど言った4Kで今回撮影したので、そのまま書き出してしまったばかりに、62時間も書き出しを待たなくなってしまい……明日締め切りだ、明日納品なのに、「すみません、明後日にならないと書き出しが終わらないんです」って言って、凄くご迷惑をおかけしたっていうトラブルがございました。これは将来、しっかり反省に活かしたいと思っております。
はい、そしてですね、ポスター作り。宣伝活動と言うところも、今までインディーズというブランドでやってた自分にとっては非常に新鮮なところでですね。メインビジュアルっていうのは、皆さん、ポスター観て、このポスターいいな、このポスター良くないな、とか――なるときのそのポスターの選定って言うのを、宣伝プロデューサの植村さんという方とつくっていって、僕がそのときに凄く大変さっていうのを知ったのは、宣伝っていうのは、完成してから始めるものでもあるんですけれども、撮影しているときから宣伝プロデューサーという方はずっと現場に来て下さって、いろんな……メインビジュアルって何かっていうのをずっとつくって、公開まで持って行けたので、そういうときにメインビジュアルどうしようかっていうときに、凄くいっぱい話し合ったり。またキャッチコピー。今回の『幻肢』という映画のキャッチコピーは「脳は嘘をつく」という、一つのセンテンスに限定しているんですけど、その前にももう、何十個も、これがいいんじゃないか、あれがいいんじゃないか、ってこう――いっぱいあった中での今回、シンプルに「脳は嘘をつく」ということでやって。あとはポスターの後ろの方に書こう、それをっていうのを皆さんでしっかり決めて……この時間っていうのは、難しい時間でしたけど、こういうことをちゃんと信頼してしゃべれるチームで本当に良かったなっていうのは、こういう宣伝活動しているときに思いました。
で、この主題歌はさめざめさんというアーティストの「それでも生きなくちゃ」っていう映画の曲でございまして、こちらは完全に脚本の段階で書き下ろしていただいたんです。なので、映画を観て、普通主題歌っていうのは書いていただくことが多いんで、それこそ「オー!ファーザー」も、作品を観ていただいてから曲を書いて下さったんですけれども、さめざめさんは台本から曲を書いて下さいまして。で、そのあとにその歌詞っていうのもほとんど直すところもないくらい、作品のことを考えてくれた歌詞を書いて下さって、そのまますぐに映画が完成するよりも先に主題歌が完成している――という今回の、これも凄く珍しいことでしたね、はい。
あとは、『幻肢』という作品が終わってからは、藤井くん、雄弥くんと呼び合うぐらい仲良くなっている遠藤君と一緒に自分が今やってますラジオ番組だったりに出演して、作品を宣伝するっていうのは、もう僕らのような若者でも何か発信できることがあるんじゃないかっていうときに、一人だとなかなか不安で、これやったら嫌われるんじゃないかなとか、こういうことはしないようにしようって思っちゃう……ちょっと引っ込み思案になっちゃうところを遠藤君がぽんと背中を押してくれて、一緒にやりましょうよって言ってくれたってことが僕の中では遠藤さんとの大きな出逢いだったなと。
あと、生放送ラジオと言うのを……ちょっとこれ、表現が違うかなと思うんですけど、「今この人に繋がっています、藤井監督」「あ、はい、はじめまして」――っていうようなラジオ番組に初めて出たんですけれども。電話をしながら、その電話の声がラジオにまるまる流れているんですけれども、そのラジオの経験っていうのは、凄く……なんていうんですかね、これは多分一生に一回しかないだろうな、というくらい貴重な経験で……これ、あんまり(話が)広がらないんで飛ばします(会場笑い)。
あとは、こういうふうに島田先生と対談をさせていただくっていう機会がとても多くて。まあ、舞台挨拶だったりとか、そのときに……後々先生とお話しするので、ここで言っちゃうのもあれなんですけれども、島田先生は凄くこう寡黙に見えるんですけれども、一度話してくださると、もうその……僕のように資料を見ながらしゃべっているんじゃなくて、頭の中からその言葉って波がぶわーって出続けているのが本当に衝撃で。後で皆さんもこの衝撃を味わっていただけると思うので、一緒にそこは聞きましょう。島田先生のお話というのは僕の中では一番大きな出逢いでしたね。
で、宣伝費という、クラウドファンディングというのを皆さんご存じの方もいらっしゃるかと思うんですけれども、『幻肢』という映画はこういう映画でこういう企画だから、この映画に賛同してくれたら、たとえば披露試写会のチケットをもらえますとか、僕らのこのプロットを、この決定原稿をプレゼントする代わりに寄付をして下さい、というもので、凄くなんていうんですかね……今は映画界でも結構増えている方法なんですけれども、今回はクラウドファンディングというもので、宣伝費の一部を募集して無事にそちらは達成して。今回その映画の中でも宣伝費っていうのは、凄く効果的に使われたんじゃないかなと思う。これは凄い時代の、かなり新しいやり方かなって、そこに参加できたたのは僕も凄く光栄で、実はこの後に僕も一度クラウドファンディングに自分が監督の映画をやらせていただいて、まだそちらは完成していないので、完成しなきゃいけないんですけれども、やはりそういうふうにすることによって、観る方と作り手の距離がすごく縮まるっていうのがこういうベットっていうものを使って、何かやるときのとてもメリットの部分だなと、僕は宣伝活動を通じて思いました。
そして、そろそろ終わりの時間になってきているんですけれど、島田先生の小説が、小説版『幻肢』が発売。そして九月二十八日ですね。公開され、そして先月、今月の頭に中国の福建省から帰ってまいりまして、最優秀脚本賞っていう賞をいただきました。で、小説の方を読んでいただいた方もいらっしゃると思うんですけれども、小説の方は男女の設定が入れ替わっております。小説版『幻肢』では、雅人っていう人間が幻で、遙という人間が主人公。記憶をなくした遙、こちらもそれ以外の設定は一緒だと思うんですけれど、本当に全然違う作品の味わい方ができて、僕も自分がつくった映画なのに、凄く興味深く読ませていただいて……なんか、僕の中ではこの男女が入れ替わった方が面白いんじゃないか、っていうのが、しかも一回、この企画会議っていう、本を作っている最中にやはりそういう話ももちろん出るんですけれども、そこのアイディアから小説版『幻肢』っていうのが誕生したわけで、やはりああいう時間っていうのは楽しい、自分の中ではああ難しいな、あそこの(不鮮明で聞き取れず。スミマセン)……小説版『幻肢』を読んで凄く思い返しました。
そして九月二十八日にK’s cimenaで公開されまして、島田先生と一緒に舞台挨拶に立たせていただきました。そして十一月末に中国で行われました第九回アジア国際青少年映画祭で受賞ということで、最後はまあ、小説と公開の方は――東京の公開はもう終わってしまっているんですけれども……全国ではまだやっているんですけれども、やはり中国での内容っていうのは、僕の中で凄くホットな話題なので、最後は中国で起きた珍事件をたくさんお話しして終わろうと思います。
福建省で、アジア国際青少年映画祭にまず行った時に廈門空港ってところから、福建福州市ってところまで「車で二時間ぐらいですよ」ってこう、現地の人に言われて。あ、そうなんですね、お願いしますって――着いたのが四時半ぐらいバスで着かないんですよね。で、中国のコーディネートの人に「もう四時間半経ってますけど」って言ったら、「まあよくある」って言われて(笑)。あ、結構あるんだなと思いながら、映画祭に行ったらですね、まあ映画祭自体は、今回はここ――写真に一緒に僕と乗っているですね、『百瀬、こっちを向いて』という作品の耶雲監督と、プロデューサーの明石プロデューサーと一緒に行ったんですけれども、僕ら三人で基本的に廻ってたんですけど、やはり四時間半、休憩なしでへろへろで今から上映かって思って……上映がありますと聞いてたので、行ったら、やはり中国はなんていうんですかね、一般公開ということの制限が凄く厳しいので、「上映はできません」ということを言われて。「でも審査はすべて終わっているものなんですけど」っていうことで、上映された作品がほとんどなかったんですよ。
で、その中でも皆さんが……その監督たちもたくさんいらっしゃってて、監督さんたちの作品を僕らはiPhoneでこう、みんなで共有して観たりとか、こういうなんか凄く面白いことがあったんですけれども、一番おどろいたのが、三日間映画祭があったうちの、一日目二日目は、どこにその観客の人がいるのかってくらい、凄く判らなかったんですけれども、『百瀬、こっちを向いて』はトークショーがあったので、僕と監督と二人でトークショーに上がって、「どうせ三十人くらいいたらいいんじゃないですかね」とか言ってたら五百人くらい人が、しかもぱんぱんに入っていて。凄い、どこからこの人たちはいらっしゃったんだろうと思うぐらい。山の中で開かれているんですけれども、凄くおどろいたことがあって、そのまま授賞式に参加したら授賞式にもそのぐらいの数の方がいらっしゃって……で、凄い豪華なゲストがたくさんいらっしゃって、アバターの撮影監督の方だったりとか、あとは中国の映画監督さんとか、こう、たくさんいらっしゃってたんですけれども、僕と耶雲監督は中国語がまったくしゃべれないので、まったくその会に参加することなく、三日間を終えましたっていう(会場笑い)。ホテルの下が凄く騒がしいなとは夜思ってたんですけれども、毎回そういうパーティーが開かれてたみたいで、それには参加できなかったので、いつか中国語を勉強して、また違う作品でアジア(青少年国際映画祭)に行きたいなと思っております。
で、今回アジア青少年国際映画祭っていうところで賞を獲ったんですけれども、『幻肢』という作品、まだまだ映画祭だったりとか、公開もまだ続いておりますので、DVDが発売される際にも皆さん是非、お手元に取っていただいて、観ていただければと思いますし、何か質問があったりとか、興味を持ったことがあったら、なんでも僕に質問をしていただければと思います。そういうところで、いいかんじの時間ですかね。ありがとうございます。六十分、緊張しながらも進めてまいりましたが、このあとは島田先生と一緒にやらせていただくので、なかなか気分は楽でございます。皆さまご清聴ありがとうございました。