関内の居酒屋で、島田荘司推理小説賞受賞者と話したこと

昨晩は、来日中の第一回島田荘司推理小説賞受賞者である寵物先生と第二回受賞者の陳浩基と食事をする機会があったので、そのときに聞いた内容を簡単ながら備忘録としてまとめておきます。

RICOH GXR + GR LENS A12 28mm F2.5

みなとみらいのカップヌードルミュージアムを愉しんできた二人と関内で合流したのち、居酒屋へ。陳浩基氏からは、自身の創作技法や学生時代のことなど色々と話をうかがうことができたのですが、印象的だった内容を。

中学校時代はイタリア人やポルトガル人など様々な国の先生から授業を受けていた。彼らが話す片言の広東語と英語でコミュニケーションを取るようなかんじだったが、こうした授業のやりかたは当たり前だと思っていて、それがけっこう特殊な環境だったと知ったのは最近のこと。

小説を書くときには、香港の読者というよりは、台湾、日本、アメリカといったグローバルな読者を意識している。

このあたりは香港という地理的事情とともに、香港におけるミステリー事情も影響しているのかもしれません。ちなみに氏は本格ミステリーのほか、ホラーも書いているのですが、作品の刊行はもっぱら台湾です。

小説のアイディアをふと思いつくのは、外に出ているときなのだけれども、そのときには敢えてメモしない。家に帰るまでの間、そのことを考えている。家に帰るまでに忘れてしまったら? それは結局たいしたアイディアではなかったということ。

このあたりの考え方は御大と比較するとちょっと面白いかもしれません。思いついたアイディアはいつでも書き留めておくことができるようにしておくこと、そのときはたいしたネタではないと思っていても、しばらく寝かせておくと、またそこから派生して斬新な着想に至ることもあるというのが御大的手法。一方、陳浩基氏の場合、そのときの直感で決めてしまうようです。

香港・台湾では編集者と一緒に作品を作り込んでいくということはあまりしない。自分の作品が刊行されたあと、読者から批判的意見をもらっても首肯できるものがあれば、それは是非とも活かして改稿してみたいと考えることもある。だから日本のように編集者からアドバイスを受けることができれば、それは積極的に受けいれたい。

「傑克魔豆殺人事件」のような童話シリーズは是非とも続けていきたい。ただ参考文献の英語が現代英語ではないのでこれが結構な難物。

色々と話をうかがっていて感じたのは、ミステリー作家としては非常にグローバルな視点の持ち主であるということで、これは日本や台湾の作家とはまた違った、香港の作家ならではの個性といえるかもしれません。同時に、小説の執筆とともに、様々な企画を考えるプロデューサとしての才能も優れていて、このあたりはゲーム業界で脚本から物語世界の構築、さらにはプログラミングなど様々なことをこなしてきたキャリアが活かされているのカモ、と感じた次第。これからの華文ミステリを牽引していく逸材として今後も注目していきたいと思います。