蛙鳴蝉噪 Wordmeansendout / Shimmer Riot

蛙鳴蝉噪 Wordmeansendout / Shimmer Riot先日、後搖滾(ポストロックバンド)の新星 Triple Deerと共演したことでその存在を知ったこのバンド。さっそく聴いてみたのですが、台湾のポストロックバンドにしては、甜梅號やselfkillといった大御所とは異なる音でなかなかのお気に入りになりそうです。

Shimmer Riotは2011年に結成。メンバーは、ギターの陳寰、ギターとシンセのLinkこと林克、ベースの阿白こと白盛方、ドラムの黃筱芸の四人編成。台湾のポストロックバンドいうと、甜梅號にしろselfkillにしろ、アルバムに収録されている各の楽曲は決して悪くないものの、中心となる旋律を同じ音色のギターが占めているためか、通して聴くと個人的にはどうにも愉しめなかったりしていたのですが、このバンド Shimmer Riotは、Triple Deerにも通じる哀愁を帯びたメロディラインと趣向を凝らしたギターの音、さらには重さよりは繊細さを前面に押し出した手数の多いドラムなどの個性によって飽きさせません。

涼やかで静謐なギターはTriple Deerを彷彿とさせるものながら、Triple Deerがリズム隊の重さによってそのメロディを支えていたのに比較すると、本作ではなぜかドラムが印象に残りました。一曲目の「Leaf Take」がその典型なのですが、アルペジオから始まるギターの背後でリズムに絡んでくるドラムの手数の多さがイイ。この曲はギターのアルペジオの旋律を全面に押し出した前半と、後半の歪んだギターとの対比など構成も素敵な一曲です。

「Depress」のギターの音は、selfkillっぽさも感じられる台湾の後搖滾らしいものなのですが、やはり哀愁を帯びたギターのアルペジオがいい。Triple Deerとは違う叙情を感じさせる一曲で、ちょっと日本の昭和っぽい、レトロな雰囲気もあったり。

「Now You Gonna Say I Told You So」は、やはりギターが展開の主導権を握っているところは後搖滾らしい構成ながら、ときにガレージっぽく、またシンプルなアルペジオの背後でキレのあるリズムを刻んでいるドラムが印象に残ります。

「Branch of Heralds」は多幸感さえ感じられる、ちょっとサイケデリックな冒頭から、これまたレトロなギターのアルペジオがゆったりと流れる一曲。劇的な展開とジャケットに相応しい冬の情景を想起させる音像が今までの後搖滾になかった強い個性を放っているTriple Deerに比較すると、あくまで台湾の後搖滾らしい風格を残しながらも新しい風を感じさせるこのバンド、今回はEPですがフルアルバムが出たらチェックしてみたいと思います。

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