オールドレンズ×美少女 / 上野由日路

オールドレンズ×美少女 / 上野由日路CAMERA fanのこのページの紹介で、『ソニーの新機能である「全画素超解像度によるマルチクロップ」については必見です』と書かれていたので購入。「マルチクロップ? ……そんな機能あったかなァ……」という疑問から現物を本屋で確認せずに手に入れてしまったのですが、この点について結論から言ってしまうと何のことはありませんでした(爆)。35mmフルサイズで「全画素超解像」を使えば、APS-C、マイクロフォーサーズ、1/2.3インチなどのフォーマットをカバーできる、……と書いていてもやはり胡散臭い感じは否めないところがちょっとアレなのですが、そのあたりを引用してみると、

ソニーα7の全画素超解像を使えば1.6倍にクロップすることでAPS-Cのサイズとほぼ同じセンサーサイズのカメラとして使えます16mmムービー用レンズのCマウントなどは25mmより望遠側であればマイクロフォーサーズのセンサーで使うことが多かったのですが、これも全画素超解像ズームで2倍にクロップすることで使うことができます。

自分も「全画素超解像度」は結構頻繁に使うクチで、――とはいっても1.3倍がせいぜいで、望遠側にするためにというよりは最短撮影距離を稼ぐような感覚で用いることが多いです。実際、この機能の紹介をしているページにおいても、テーブルに置いたレンズを撮影し、写真の中心部を拡大して「光学ズーム」と「全画素超解像」との解像度の比較をしています。

本書ではこれをCマウントなど、35mmフルサイズでは従来使えなかったレンズも使えるよと主張しているわけですが、タイトルが「オールドレンズ×美少女」であることからも明らかな通り、ポートレートであるところがミソ。また上にも述べた通り作例として中心部の拡大写真を掲載しているところでも、テーブルフォトに準じた被写体を用いています。これを風景など、遠景の高周波バリバリの被写体でやろうものなら、ほとんどの人は「全画素超解像」ってさ、やっぱり使えないんじゃないノ、――という感想を持たれるのではないでしょうか。要は解像重視のモチーフではなく、ポートレートのようなむしろ高い解像を必要としない被写体で、さらに1.3倍程度でおさめるのであれば、この機能はかなり使えるような気がします。もっともあくまで個人的な感想ではありますが。

――と、こうした視点から本書に収録されているポートレートを見ていくと、いくつかはかなり解像が甘い写真があることが判ります。しかしながらそれも大きな疵に感じられないのはやはり、”美少女”という高い解像を必要としない被写体ゆえでしょう。オールドレンズといっても、ヤシコンとタクマーしか使わない自分にはマッタク縁遠いレンズばかりがズラリズラリと並べられた本書ですが、CarlZeissのCine Planar 50mm F2や32mm F2の優しい描写に惚れ惚れしたり、Leica NOCTILUX-M 50mm F1のとろけるようなボケを堪能できたりと、なかなか愉しめた次第です。”美少女”の写真集プラス、オールドレンズビギナーのための知識がうまくまとめられた本としてはかなりオススメできる一冊といえるのではないでしょうか。