アンデッドガール・マーダーファルス / 青崎有吾

アンデッドガール・マーダーファルス / 青崎有吾素晴らしい。「早く続きを読ませなさいッ! 早くッッ!」と叫びたいほどの面白さで堪能しました。リアリズムに立脚した現実世界を舞台に、クイーン流の精緻なロジックで魅せてくれる従来の路線から一転して、本作は怪物と人間が共存している奇妙な異世界を舞台にした物語。序章から第一章、第二章という章立てになっていますが、第一章、第二章ともども一話完結の短編として愉しめるところが面白い。

序章「鬼殺し」で、まずは奇妙な姿をした探偵と、これまた奇妙な出自を持ったワトソン役(?)との邂逅が描かれ、物語は一気に異国へとひとっ飛び、第一章の「吸血鬼」はその名の通りに、人間の血は一切吸いませんと宣言して共存を果たしてる吸血鬼一族の一人が殺され、サテその犯人は、――という物語。学園ものでクイーン流のロジックを駆使してみせた筋の良さは健在ながら、本作では、ホームズばりの観察と「気づき」から、異世界ならではの論理を繰り出してくる謎解きの趣向が素晴らしいの一言。そしてそこに用いられた犯行の様態また痛快で、これが人間世界で行われたものであれば、既視感ありまくりのマッタク陳腐なものとして嘲笑の対象にさえなってしまうほどのトリックが暴露されるのですが、なぜこんな黄金期本格では既視感ありまくりの古くさいトリックを用いるのか、そしてクイーン流以上に、探偵の推理作法がホームズっぽいのか、――そうした本作の謎が、第三章の最後の最期に宿敵の登場とともに明かされる趣向も素晴らしい。

「吸血鬼」のトリックでは、やはり犯行に用いられた凶器に注目で、この凶器を効果的なものとしているのが、古典ミステリからの引用となる二つのトリックなのですが、正直この発想にはまったく思い至りませんでした。というのも、これが現実世界であれば絶対にありえないものでもあるからで、被害者が吸血鬼であるからこそ、この二つのトリックを重ね合わせることで実現可能なものとなる犯行方法が、探偵の口から明かされたときには完全に口アングリ。異世界を自らつくりだし、「怪物を人間世界に引きずり下ろし、論理をあてはめる」ことで、古いトリックに新しい生命を吹き込んでみせた作者の試みには完全に脱帽です。

続く「人造人間」はお馴染みフランケンシュタインの怪物が登場するのですが、こちらは怪物誕生の瞬間に人死にが発生、被害者が当の博士でこれが首無し死体となって転がってい、その傍らには件の完成された怪物が呆然と佇んでいた、――さらにこの犯行現場が密室でというオマケつきなのですが、この密室の仕掛けについてはアッサリと物語の前半で種明かしをしてみせ、読者の興味を首の消失へと振り向けた後からの展開が本番でしょう。実をいうと、この時点でトリックにはアタリがついてしまったのですが(爆)、ここでは事件が解決した後の後日譚とでもいうべきところで、探偵の宿敵とでもいうべき人物”たち”が登場したところに注目でしょうか。なるほど、それで、――と先ほど上に述べたような本作の作風の謎に納得した次第。そしてこの人造人間の怪物をワルの仲間へと引き込むシーンで、怪物の「名前」が重要な鍵となっているところなど、メアリー・シェリーのあの物語をしっかりとリスペクトしているところも好感度大。

しかしこのワル側の展開が何だか、山田風太郎の『魔界転生』に似てなくない? ……と苦笑しつつも妙にコーフンしてしまったのはナイショです(爆)。とにかくこれはもう、続きが読みたくて仕方がありません。担当編集者におかれましては、作者を鞭打ってでも直ちに次作の執筆に着手するよう、ハッパをかけていただきたいと思います。東京創元社から刊行されている学園ものの素晴らしい出来映えですが、ジャケからしてファンタジーかラノベっぽいし、……なんて躊躇する必要は没問題。いや、黄金本格を知っているロートルの読者こそ、本作はより愉しめるのではないでしょうか。オススメです。