Poet from the northern sea / unii

Poet from the northern sea / uniifacebookをボーッと眺めていたら、友達の友達だか誰だかが「これいいヨ」と話していたのを見つけて購入。ここ最近、Will Samsonの新譜『Lua』にハマっていた自分にはまさに至宝ともいえる逸品で、Taylor Deupreeや12kの音楽が大好きなんて人にはまさにたまらないご馳走といえるのではないでしょうか。

正直uniiのことはまったく知らずに聴き出したのですが、ネットで調べてみると、北海道在住で、どうやらインフィニットループでプログラマーとして働きながら趣味で音楽活動を続けており、今年の六月には一ヶ月間のヨーロッパツアーを敢行その間の様子がInstagramに公開されていました。公式サイトのバイオグラフィーには、”her style is described as post Bjork that it floats us into dream-like soundscape.”とありますが、ビョークというよりは、やはり12k周辺のサウンドだよなァ、……というのが自分の感想です。ダークな感じは一切なく、むしろ北海道での作曲活動という背景や、そのジャケットからイメージされる通りの、冷え冷えとしたサウンドと彼女の暖かいウィスパーヴォイスの重なりが印象的なアルバムです。

遠近感や浮遊感をともなう音に比較して、彼女の歌声が意外に明瞭に聴こえてくるところが、単なる電子音楽ではなく、ヴォーカルアルバムとして主張しているようにも感じられ、ずーっとこの音に耳をまかせていると無念無想の境地でトリップできる心地よさが素晴らしい。冒頭の「Breaths」の寒々とした電子音の彼方から彼女の声が高みへと上昇していく浮遊感は、最近聴いていたWill Samson『Lua』の「Antepassado」にも通じる”こうした音楽”では定番でしょう。この曲が気に入ったらこのアルバムは買いといってもいいくらい。「Berga」は「Breaths」と同様の趣向を持ちながらよりボーカル曲としての印象を強くし、続く「Anteroid」ではやや趣向を変えて実験的な方向へと流れていきますが、背景の音に相違して、より詩を意識した曲風もまた素晴らしい。

「Northern sea」も「Breaths」と同様の雰囲気ながら、アコースティックな音も添えてゆったりとスローなテンポな保ったまま仄消えていく流れが抜群に心地よい。「You」のウィスパーボイスも絶品なら、「The moment」の後半でささやかなリズムが加わり、盛り上がっていく構成も心憎い。よーく聴けばそれぞれの曲には個性があるのですが、全体のトーンは徹底して統一されており、北海道というアーティストの背景や、「Poet from the northern sea」というアルバムタイトル、そしてジャケットの雰囲気など、まさにイメージ通りの冷え冷えとした音楽は、まさにこの暑い夏に聴くのがベストという気もします。上にも書きましたが、12kが好きな人であれば文句なしに買いでしょう。オススメです。