アマゾンのレビューをざっと見渡しても賛否両論で大変なことになっている本作品。前作『haruna3』同様、今回も予約をして購入した本作ですが、とにかく結論から先に言ってしまうと、これは駄目(キッパリ)。このご時世、作風を大きく変えて女子向けにアピールしたい気持ちは痛いほどに判るものの、この作風の変化をもたらしたものは何なのか。やはり版元がアイドル写真集の大御所たるワニブックスから東京ニュース通信社へと変わったこと、そしてカメラマンが長野博文氏から富取正明氏へとバトンタッチされたことが大きいのでしょう。この変化は川口春奈の写真集を追いかけてきたファンからすると、一つの事件といってもいいカモしれません。
長野博文氏といえば、ファースト写真集『haruna』から、『haruna2』と彼女を撮り続けたカメラマンで、言うなれば川口春奈の魅力を知り尽くした匠でもあります。一方、今回のカメラマンに抜擢された富取正明氏は川口春奈の魅力を知り尽くしているというにはほど遠く、おそらくは編集者からの「女子受けしそうなファッションポートレートでお願いしやす」というリクエストにそのまま従い、今回の仕事をこなしたものと推察されます。
全体的にラフな撮り方でお洒落感を演出しているところが本作の大きな特徴で、前半部では逆光、逆光、また逆光で妙にボンヤリしたポートレートを量産し、「春奈ちゃんの綺麗なきれいな柔肌をガッツリ、ジックリ見たいんダイ」という昔からのファンの期待をあっさりとスルーしてみせたと思えば、中間部でも解像度が低めに見えるアップ写真を添えてモデルのプライベート写真のような雰囲気を出しているところがまた哀しい。
グレーの水着写真が並ぶ後半部では、くっきり、はっきりと解像した写真の数々でようやく盛り返しを見せますがときすでに遅し。彼女の大きな魅力のひとつであるヒップラインをうかがうことのできる写真はたったの二枚で、その一枚は逆光気味に彼女の見返り美人姿をとらえたものながら、バックの開いたブラウスを纏う後ろ背で膝立ちするポーズでは、畢竟、臀を前に突き出した格好を強いられるため、ヒップラインが美しく映える筈もなく、水着の皺ばかりが気になるという残念仕様で、さらなる一枚も赤水着で下臀を水面にすっかり隠してしまっている体勢ゆえ、これまたヒップラインをじっくりと堪能することは叶わずというテイタラク。
川口春奈といえば(胸はないけど)とにかく尻! というこだわりを見せるマニアの男衆もがっくりと肩を落とすこと請け合いという作風ゆえ、かなり厳しい感想になってしまいましたが、個人的には女子受けの写真集がおしなべて悪いとは思いません。むしろそうした作風の転換の中から傑作が生まれることもあるに違いなく、たとえば小学館から最近刊行された『橋本奈々未写真集 2017』などはその好例の一冊として挙げることができるでしょう。長野博文氏が女子向けの作風で川口春奈を撮ったら。あるいはワニブックスが富取正明氏に今回の作風のサジェスチョンを行っていれば……などなど様々な思いが交錯し、複雑な読後感にモヤモヤしてしまう本作。彼女の大大大大大ファンで「春奈ちゃんの姿を見ただけでコーフンしてしまう。タマらなくなってしまう」という変態道を邁進する御仁以外は、敢えてスルーするのも一つの”道”かもしれません。
ワニブックスからのリリースを再び、そして長野博文氏カムバックと祈念しつつ、次作を期待したいと思います。
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