ドローン探偵と世界の終わりの館 / 早坂 吝

偏愛。エロ抜きの吝ミステリとはいえ、バカミス的仕掛けがしっかりと用意されていて、ドローンについてはある程度の知識があったにも関わらず、非常に気持ちよく欺されました。

物語は、大学の探偵部の連中とともにキ印が建てた廃館を演じる中探検することになるも、殺人事件が発生して、――という話。タイトルにもなっているドローン探偵が負傷のため、探検部のメンバーの廃墟探索に同道することがかなわず、ドローンに搭載されたカメラを用いて彼らの動静を見守っているという設定がミソ。

「なんでイマドキのドローンなのにアレができないんだろう」、という疑問は当初からあったのですが、まさかそれがこの仕掛けに大きく絡んでいたとは、……と真相が明かされたときには悔しいやら嬉しいやら。とにかく気持ちよく欺された感じです。本作ではドローンの特徴を活かした仕掛けというよりは、上にも書いた通り、イマドキのドローンであれば当然搭載されているべき機能をまったく用いていないことが大きな伏線となっており、この隠蔽が舞台装置に隠された真相そのものを読者に気取らせない仕掛けとして機能しているところが秀逸です。

そしてこの視覚に依拠しながらある真相を隠蔽する仕掛けは、吝ミステリの『○○○○○○○○殺人事件』を彷彿とさせるものの、個人的にはそれが連続殺人事件の舞台となっている廃館に大きく絡んでいるため、すっごくクラニーっぽいナ、と感じた次第です。

探検部のメンバーの内心や過去の逸話をさりげなく綴りながら、おのおのの暗い動機を暗示して事件へと繋げていく構成や、お嬢様ヒロインと彼女の影となって寄り添う男の複雑な変心や、ドローン探偵の厨二病丸出しの逸話や、事件を解決したあとの次作に繋げるっぽいヒーロードラマのような爽やかな帰結など、バカミス的な趣向とは裏腹に、意外と――といっては失礼ですが、『誰も僕を裁けない』っぽく、破天荒な仕掛けの中にも、しっかりと人間ドラマを添えた構成が心憎い。

本当にこの作者の抽出は凄いなァ、――と関心至極で、次はどんな手で読者を欺してくれるのかと、やはり新作に期待しないわけにはいきません。らいちものではないゆえ、エロはナッシング、――とはいえ、まあ、異母兄妹という設定からピンク色の妄想を頭の中にムンムンさせながら愉しむことも想像力豊かな読者であれば可能といえば可能ではありますが、基本的にそういう描写を期待するとちょっと、……という風格ながら、『○○○○○○○○殺人事件』や、さらにはクラニーのバカミスが大好物という好事家であれば必ずや満足できるのではという逸品です。オススメでしょう。

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