首洗い滝 よろず建物因縁帳 / 内藤 了

傑作。前作『鬼の蔵 よろず建物因縁帳』で、すっかりハマってしまったこのシリーズ、本作もまた死者の妄念と悲哀溢れる怪談物語に感動、感涙。ホラーでありながら、やはり怪談、いやいや、怪異や曰くを繋げて過去の因縁話を織り上げる技法はまさに本格ミステリ、――という具合に複数のジャンルのエンタメ要素をギュギュッと一冊に詰め込んだ逸品です。

今回も、サニワ要素大アリのヒロインや曳き屋の渋イケメン、その弟子のチャラ男に、生臭坊主や飄々とした学者先生など、前作と同様の布陣で魅せてくれます。物語は、地図にもない曰く大アリの滝で事故が発生。顔を剥がれてご臨終となったクライマーの屍体が浮かび上がるその場所は「首洗い滝」と呼ばれ、近くの神社も含めて何やら忌まわしい過去が潜んでいる様子。そこへ広告代理店に勤めるサニワ娘がまたまた件の現場開発に携わることになり、――という話。

『鬼の蔵』は怪異の現出する現場の不可解を大きな謎として、過去の因縁を推理していく結構でしたが、本作では立ち現れる幽霊的存在の奇妙さと隠された仏像の作り主など様々なピースを繋げて、怪異の端緒となった因縁を悲哀溢れる物語へと昇華させていく推理の過程の見せ方が前作以上に際だっている印象を持ちました。過去へと遡及していく視点によって、怪異を巡る因縁はある仏師と彼に付き添ってこの池を訪れた女の二人の人物へと収斂していくのですが、記録に残されたこの人物たちの行動に違和感を見出し、そこから怪異が出現するメカニズムを解析していく曳き屋・仙龍たちのチーム・プレイも素晴らしい。

優秀なサニワとして目撃した怪異を証言しながら解読の道筋を提示するヒロインや、見かけによらず古文書をすらすらと読めてしまうチャラ男など、前作ですっかりお馴染みとなった登場人物のキャラ立ちも期待通り。本作では前作以上に、仙龍による除霊・鎮魂の儀式の描写が秀逸で、もちろん彼がここで死なないことは前作で明かされた宿業から名明白ではあるのですが、このシーンでは不安を胸に見守るヒロインの視点と、実際に怪異を肌で感じながら滝の中へと分け入っていく仙龍の視点を交錯させた描写がとてもイイ。緊張感がマックスになったところで迎える大団円など、とにかくシンプルな怪談ではなしえない、ホラーや本格ミステリ的な要素を混淆させたからこその際だつエンタメ的な幕引きもいうことなし。自分のように前作を大変愉しめた人であれば文句なしに満足できる一冊ではないでしょうか。オススメです。

とにかくシリーズの次作が気になって仕方がないのですが、それ以上に作者の素晴らしい筆致に魅了されてしまいました。これはもう、作者の代表作ともいえる『猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』シリーズも読破せねばと感じている次第です。

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