山手線デス・サーキット / 藤 ダリオ

何だかんだいって本屋で見かけると買ってしまうダリオ氏の新作。『出口なし』を刊行時に単行本で購入し、その後に出た『同葬会』も確かリリース時に手に入れて、さてその次となる本作、――と続けようと何気にジャケ裏の作者紹介を見返したら『ミステリー・ドラマ』なる作品が角川から、さらにダリオ氏は「児童向け作家としての活躍中」で、『あやかし探偵団 事件ファイル』なる作品もくもん出版から刊行されているとのこと。自分のようなキワモノ好きしか手に取っていないような気がしないでもないでもない、……のですが『ミステリー・ドラマ』はどこかの本屋で見つけてみたらゲットしてみたいと思います。

で、本作ですが、『出口なし』と同様、とにかく目が覚めたら複数人が謎のゲームに巻き込まれてテンヤワンヤ、という話。タイトルは『山手線デス・サーキット』ですが、物語の後半は中央線が舞台となるなど、そうしたアバウトさも含めていつものダリオ節です。

ゲームメーカーなる謎の人物がたびたびクイズを出題し、首輪に爆弾をつけられた主人公たちがその質問に答えていく、正解しないと別の場所にいる仲間が銃殺されるという趣向ながら、今回はこのクイズを中心としたゲームの背景が最後の最後に明かされるという仕掛けがあり、その意味では不条理感を前面に押しだしたホラーとしての風格が強かった『出口なし』に比較すると、よりミステリに近いといえるかもしれません。

狂人と思われる謎の犯人が出題するクイズがバカみたいに簡単で、誰でも答えられるというところがミソ。実はこのクイズの正解云々よりもその奥の奥に真相が隠されているという技巧は、暗号ミステリめいた雰囲気を醸し出してい、後半、主人公は見事、正解にたどり着くのですが、このゲームの背後で隠微に進行していたある事件までは解き明かすことができず、ただただ犯人の掌の上で踊らされていたという皮肉な結末を迎えます。このあたりもある意味予定調和っぽいのですが、さらにこのあと後日談として主人公がついに真犯人と相対する幕引きには、「ウフフ……皆さんの反響次第では、続編があるかもしれないかもしれない、ですよ?」というダリオ氏のニヤけた笑いが思い浮かびます。

ただ、続編をつくるにしても、いかんせんゲーム小説に注力したつくりの副作用として、主人公も含めた登場人物たちが軽薄を極め、皮相的なキャラで終わっているところがかなり惜しい。カイジや零のような個性的な登場人物だったらなア、……とため息をつくことしきりながら、わけのわからないホラー風味から、技巧を凝らしたミステリへと風格を変えてきたところは興味深く、やはり次作が角川ホラー文庫から出たら買ってしまうカモ、という気もします。基本的にはミステリ読みゆえ『出口なし』 、『同葬会』も含めた三作の中ではもっとも好感度大で、『出口なし』はお気楽なゲーム小説だったけど、ミステリっぽいのだったら、――と興味を持たれた方であれば、なかなかに愉しめる一冊といえるのではないでしょうか。