Sofa Sea 沙發海 / 陳綺貞

ようやく聴くことができた陳綺貞の最新作。リリースは昨年末ですが、なかなか手に入れる機会が訪れず、今になってようやく聴くことができた次第。まず最初にざっと通しで一枚を聴いてみた印象は今回はあんまりだなァ……だったのですが、この数日聞き込んでいるうちにようやく、嗚呼、いつもの彼女の音楽だなァ、と納得できたような気がします。

冒頭の「傷害」は今までにない激しいギターから幕を明けるハードな一曲で、そこから落ち着いた「小船」へと転じる構成がいい。「小船」から「殘缺的彩虹」、「台北某個地方」、「沙發海」は『GROUPIES 吉它手』あたりでも聴くことのできたお馴染みの曲調で、昔からのファンであればこれだけでも十二分に満足できるのではないでしょうか。

そして本作一番の問題作は「跳舞吧」ではないでしょうか。出だしの”らしくない”ギターのカッティングと打ち込みドラム(だと思う)だけでも十分に意想外だったのですが、曲が進めば進むほど、打ち込みドラムがPerfumeあたりのちょっと前の曲にしか聞こえないところにまず吃驚。そこからさらに進むにつれ中田ヤスタカでしょッ!としか形容のしようがない激しいブレイクビーツを披露してみせたりと、おしなべて陳綺貞“らしくない”一曲ながら、これが聴けば聴くほどクセになるから不思議なもの。通しで聴いたときには一番イケてない一曲だったのですが、収録作の中では今や一番のお気に入りかも知れない(爆)。

続く「她說」「華生」ではいつも通りの曲調にあっさりと戻るのですが、よくいえば彼女らしい曲展開と構成ながら、前半の「小船」から「殘缺的彩虹」、「台北某個地方」、「沙發海」への流れと同じで全体的にトーンが同じところが地味、単調と感じてしまった所以かもしれません。

「變色龍」で再び激しいギター曲へと転じて、最後の「觀察者」でしっとりとシメてみせるアルバム構成は、昔からのファンであれば安心して聴き通すことのできる一枚としても納得できるものでしょう。その一方で、やはり自分としては神がかった美しさが強烈な印象を残す「一首歌,讓你帶回去」で閉幕する『太陽』に比較すると、やっぱりちょっと地味だよなァ、……とこの感想を書くために再び『太陽』と『時間的歌』を聞き返してみるにつけそんなことを感じてしまうのでありました。

決して悪くはない一枚なのですが、『還是會寂寞』からの彼女の変遷を知らない新たな聞き手の方が本作を素直に愉しめるような気がします。もう少し聞き込んでいけばまた印象を変わってくるかもしれないので、しばらくはヘビロテで流してみることにします。

52赫茲 / THE VERSE

3 comments on “Sofa Sea 沙發海 / 陳綺貞

  1. いむすた

    な~んだ、言ってくれればこの前お持ちしたのに。
    うちにストックありました。勿論、新品未開封品です。
    「跳舞吧」はVERSEの流れかな?と思いました。ライブだと小虎と二人で観客席側の別ステージに立ったので、当然ながら大盛り上がりでした。
    個人的には「傷害」が一番好きかな。この曲は今までの盛り上がりパターンに加わる可能性があると思っていたのに、小巨蛋では早々に歌われてしまい「アレレ?」って感じでしたけど。
    まぁ、他の曲もこれからコンサートを重ねて、段々とこなれてくるのでしょう。
    大陸へのツアーが始まりますが、高雄巨蛋に戻ってくる日を待っています。

    • markyu

      こんばんはー。最近ようやっとKKBOX使うようになりまして、コレで聴くことができました(プログレに強いAmazon Music Unlimitedがメイン)。今回のアルバムもそこそこに『VERSE』での経験が活かされているように感じました。その一方で、ストリングスの使い方とかは『太陽』から継承されている風格もあって嫌いじゃないんですけど、自分の中ではやはり『太陽』の衝撃が強すぎて……(^^;)。

      「傷害」も名曲だと思うんですけど、これまた『太陽』の表題曲「太陽」の盛りあがりに較べると……という感じで、ついつい相似点が多いがゆえに『太陽』と較べてしまうのでありました。『時間的歌』くらいはっちゃけていたらもう少し違った感想になったカモしれません。

      ……と、この返信は美好前程の『著色』をあらためて聴きながら書いているんですけど、いむすたさんはこれ、行かれるんですよね? 自分は3/14(木)の新宿に足を運ぶべきかいまだに逡巡している次第です。他の日程も対バンの曲とか聴いてみたら激しいやつばっかで、客層もヤングばっかりで自分みたいなロートルは疲れるんじゃないかと迷ってます(といいなら、結局XHARKIEは行ってみることにしました。ほぼ地元の町田だったらそんなに疲れないだろうということで(^^;)。

  2. いむすた

    KK BOX、有料会員への魅力が感じられず未だ導入に至らずです。演唱會独占配信とかあれば考えるのですが・・・。もっとも日本のKK BOXでは中華系の配信に期待は持てないでしょうけど。

    美好前程、行きますよ。今の所確定しているのは18日の渋谷だけです。14日と17日も行く予定ではありますが、いずれも帰省の前当日なので確定させておらず、チケットの申込みもしていません。
    対バン、確かにパンク、メタル系が多いと思いますが客数がそれほど多くないと思うので、観るには余裕だと思います。音の大きさで疲れる、美好前程の出番まで立ちっぱなしで疲れる。ということはあるかと思いますが、出番の時間に合わせて行けば防げますね^^;。

    僕はXHARKIEは見送りですが、町田には友人が行くようです。僕の次の予定は月見ル君想フでの「台湾原住民音楽の夜」ですが、前日の「台青蕉樂團Youth banana live in Tokyo」にも行くかもしれません。

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