この数ヶ月の間ブログの更新をサボっていたのには、情報発信をしていくモチベーションがダダ下がりで、――というのもあるのですが、ここ最近は相当に眼の調子が悪く、あまり本を読むことができていないのも大きな理由だったりします。じゃあ、活字が読めない間はいったい何をしていたのかというと、日本のインディーズ・アンビエントの音楽を聴き漁っていました。これは今も続けてい、某所でポツポツと簡単なレビューをあげているのですが、その感想もある程度の数になってきたので、備忘録代わりにこのブログへまとめておくことにしようと思い立った次第。
というわけで、その第一弾は福島市在住の鬼才、Saito Kojiの一枚を。この鬼才にして異能のアーティストの存在を知ったのは、五月の初めのころだったでしょうか。bandcampのアドレスだけを残して「もう創作活動は辞める」という宣言を某所にて偶然眼にしたのがきっかけでした。bandcampではすべてのアルバムを一括割安で購入できることもあって、当時は29枚リリースされていたすべてをゲットして聴き始めたところ、その多様な作風と実験性にすっかり打ちのめされてしまいました。以後コンスタントにリリースされる新作をせっせと購入し続けて、そのコレクションの数たるや今日現在で80枚近く。UKには120枚以上をbandcampでリリースしているoliviawayという怪物がいますが、多作という点においてはSaito Kojiも負けてはいません。
Saito Kojiの作風を一言で一括りに語ることは大変に難しく、アルバムごとにまったく異なるところが大きな特徴でしょうか。本作は、何十枚とある作品の中でもかなり聞きやすい一枚で、シンプルなピアノの旋律がただひたすら繰り返されるだけの49分ながら、しかしここにはタイトルから想起される睡眠導入としての仕掛けがある。
Brian Eno『Music For Airports』の“1”に翳りを添えたようなピアノの旋律が緩急を自在に変えていく趣向で、透き通ったディレイ音が静謐な空間をつくりだしていく。じーっと聴いていると本当に眠くなってくるので、ほどほどに、ということになりますが、それはまさに至福の49分といってもいい心地よさを堪能することができます。強烈な個性を脱色したように見えながら、そこへ巧妙な仕掛けを凝らした逸品で、「癒やし」のSaito Kojiを求めるリスナーには格好の一枚といえるかもしれません。オススメです。
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