Tagajo Sunday / Saito Koji

メモを見返してみると、Saito Kojiのフルディスコグラフィーをbandcampで購入したのが5月11日のことで、そのときは29枚だったのが、その後ほぼ日刊でアルバムをリリースし続けていまや公開されているアルバム総数は80枚近くにのぼるのだから、Saito Kojiが他作家であることは間違いありません。

そのなかでもドローン作品はいくつもあり、49分に及ぶディストーション・ギターが緩やかに浮沈を繰り返す『Axis』、ギターのうねりが重厚な音塊となって聴く者を圧倒する『Fukushima Ghosts And Flowers』に収録された“5”、そして旋律らしい旋律を排して長大に引き延ばされたギター音が繰り返されるギター・ドローンの決定版にして最新作『Drone Man』、教会オルガンめく音が静謐な音空間をつくりだす『Drug』(“1″、”2”)、ギラギラした反射光のようなオルガンが圧倒的な密度で迫り来る『Goodbye My Teenage』など枚挙に暇がないのですが、本作ではそうしたSaito Kojiならではの、ギターとオルガンによるドローン・ミュージックをコンパクトに収録した一枚となっています。

これもSaito Kojiのアルバムの特徴なのですが、それぞれの曲のタイトルはシンプルを極め、本作でも、『Tagajo Sunday』というアルバムタイトルに1から3とナンバリングした3曲を収録。いずれの曲も、旋律としてとらえがたい音響が繰り返されるピュアなドローンで、1ではオルガン、2はノイジーなギター、3は薄明の海を漂うような電子音という具合に、ベクトルを同じくしながらそれぞれの音像が異なるところが本作の大きな魅力でしょう。

オルガンをフィーチャーした“1”はMessiaenの『La Nativite du Seigneur』あたりをさらに無調へと振り切って静謐な音空間を作り出した逸品で、ギターノイズが生起と退潮を繰り返す”2″を経て、“3”では電子音の揺らぎのなかにゆっくりと別の音がレイヤーされていく展開と構成が心地よい。上にあげた重厚なドローン作品とは異なり、3曲ともに20分ほどにまとめられているため(それでも長いわけですが)、Saito Kojiのドローン・ミュージックとはどのようなものか、ということを知るにも格好なサンプルたりえる一枚といえるのではないでしょうか。オススメです。

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