ピアニストにしてドラマー、超絶な即興演奏と歌ものポップスを自由に行き来してロートルのプログレマニアを大歓喜させる彼女のライブを収録。bandcampではこの前に『2020.3.10/Improvisation SoloLive』をリリースしており、bandcampでのライブ盤はこのアルバムが二枚目ということになります。
前作『2020.3.10/Improvisation SoloLive』も精霊化したオリヴィエ・メシアンと吉田達也の生き霊が憑依したかのようなスリリングで恐ろしい演奏を聴かせてくれましたが、今回は電子ノイズと連打されるリズムの混沌から浮上する彼女の歌声が中盤と後半に配置され、実験音楽とポップスとのコントラストをより効かせた構成が素晴らしい。
混沌から歌へと移り変わる構成は、彼女のソロ二枚目の『Metéôros』――あのアルバムの後半、”組曲「薬疹」”から名曲”沈める月”へと連なる感動と興奮を彷彿とさせる仕上がり。『Metéôros』の歌モノでは”沈める月”の印象が強く、このアルバムを最後を飾る”深海魚”の美しさには今まで気を留めていなかったのですが、これはイイ。
『2020.3.10/Improvisation SoloLive』と同様、音質はブートレグですが、こちらの方が若干良くなっているような気がします。どちらも強くオススメではありますが、『Metéôros』の作風をライブ、という方であればこちらをということになるでしょうか。