昨年9月に台湾で開催された第六回島田荘司推理小説賞のレポートの続きです。羽田から台北松山空港に到着早々、台北101の『時時香 RICE BAR』でランチをとった――というのが前回の内容ですが、このあとは確か金車文藝中心のスタッフの運転で先生の宿泊するホテルに向かいました。自分はこのホテルからほど近い場所に泊まることにしていたので、いったんここで別れ、ひとまずチェックインをすませたあと、また先生のホテルまでとって返して向かった先は、授賞式が開催される会場の金車文藝中心。
ここ、前回訪れたときは一階がMR.BROWN.の店舗だったのが、今回はレストランに変わってました。で、この洋風レストランが授賞式のあとの晩餐会会場だったのですが、このときのことについてはまた後日。
さて会場に到着すると、時間が押していることもあって、さっそく会場の隅で先生のインタビューが始まりました。
皇冠に金車文藝、新聞記者のインタビューが動画撮影も交えて行われていた様子。自分はこのとき会場の奥にある控え室で某作家と話をしていたのですが、これについては多分次の記事で言及します。
写真の後ろに設えられた三つのポスターが今回入選した三作品。左から唐嘉邦『野球倶楽部事件 』、弋蘭『無無明』、柏菲思『強弱』。受賞作は既報の通り、『野球倶楽部事件』となりました。
日本統治時代を舞台にし、野球をテーマとした物語となると、映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』を思い浮かべる方が多いかもしれないものの、本作に野球シーンはほとんど登場しません。むしろ初期の鮎川哲也の鉄道ものを想起させる作風で、列車を用いたアリバイ・トリックのなかに騙りの技巧を凝らした一作で、『KANO』から、原住民と漢族を取り巻く中華民国以前の台湾の状況を活写したテレビドラマの『傀儡花』、そして白色恐怖の時代を背景にしたホラーの傑作『返校』と、ここ最近は歴史ものの活況が際だつ台湾の映像界ですが、この『野球倶楽部事件』もこうした流れがついにミステリ小説にも――という期待を感じさせる傑作に仕上がっています。
『野球倶楽部事件』がいつ日本で刊行されるのか、あるいはこの大不況下ゆえお蔵入りとなってしまうのかは自分にもまったく判らないのですが、また何か進展があればここで言及するかもしれません。
というわけで、次回は金車文藝中心の控え室で行われていたもう一つのインタビューについてレポートする予定です。