死亡通知書 暗黒者 / 周 浩暉

『死亡通知書』シリーズ第一弾。本格ミステリかな、と思って読み始めたら、激烈なサスペンスでかなり吃驚。華文ミステリというよりその筋は欧米のサスペンスに近く、饒舌な地の文に込められた熱量と原文である中国語の香気を残しながら、欧米小説の疾走感をタップリ添えた訳文も素晴らしく、一気読みしてしまいました。

物語は、「死亡通知書」を送りつけて悪人を殺しまくるシリアルキラー「エウメニデス」と警察陣の死闘を描いたもので、ここに十八年前の因縁も交えて現在の事件がサスペンスフルに展開していきます。登場する警察側の人間も、過去にワルの仕掛けた爆弾処理で恋人を死なせてしまったトラウマを抱える主人公の刑事に、聡明な中華美女の心理学者、やや軽めなキャラの(といいながら読んでいたときのイメージは 浅利陽介演じる『相棒』の青木年男のイメージ(爆))IT専門官など、ハリウッド映画にも登場しそうな面々ばかり。主人公のトラウマ刑事・羅は余所からやってきた人物ということで、警察内部の疑惑も交えて、「エウメニデス」という正体の知れない殺人鬼誕生の逸話にも大きく絡んでくる現在と過去の時間軸を重ねた構成が秀逸です。

死亡通知書が送られてきた人物の護衛→失敗というルーチンを得て、最後の最期に過去の逸話とともに明かされる「エウメニデス」の正体はフーダニットの定石を踏まえたものながら、最後の標的を殺害する方法とその意想外な結末は意表を衝き、そこから次の物語へと繋げる不穏なエピローグがとてもイイ。

中盤に展開される余所者刑事の主人公の過去を疑う警察内部の様相は、日本のミステリでいえば横山秀夫や髙村薫を彷彿とさせるものの、たとえば雷鈞の傑作『黄』のように日本の本格ミステリからの影響を辿れるような雰囲気は薄く、やはり欧米サスペンスの風格が色濃く出ている気がしました。なので、華文ミステリの読み手のみならず、むしろ欧米のミステリ小説のファンの方がこの物語にはどっぷりのめり込めるカモしれません。オススメです。