第七回金車・島田荘司推理小説賞の一次選考通過作が発表されました

これ、本当なら四月に記事としてあげておくべきだったのですが、どうにも色々とバタバタして時間がとれず後回しになってました。一次選考通過作のリストは金車文藝中心のサイトに掲示されています。

【第七屆 金車.島田莊司推理小說獎】初選結果

『九州・蒹葭』はタイトルにもあるファンタジー世界“九州”を舞台に据えた物語で、秘術事件の調査機関から行方知れずとなった人物を追ううち、関係者二人が殺害される事件が発生。調査官である探偵は、秘術を用いて被害者の生前の記憶から事件の真相を探り当てようとするのだが――という話。王朝もの(?)の作風に、魔術世界ならではの特殊設定を凝らした異世界もの。
 
『蒙娜麗莎的后背』は数人のメイドが働く館で画壇の大御所が殺害される事件が発生。密室と化けた館で彼を殺害した犯人と登場人物たちにまつわる意外な過去が明かされていく――。錯綜する物理トリックの解明から、被害者と犯人の秘密と生き様が炙り出される構成が巧みな一編。
 
『隨機死亡』は、どことも知れぬ建物に幽閉された人物たちの前に、カラクリ魔女カーリーなる異形が現れ、お前たちの罪を暴き罰を与えると宣言する。彼らはカーリーの示した規則に従うまま、各階で提出される事件の謎解きを行い脱出を目指すものの、殺戮機械の手によって無慈悲な殺人が繰り返される。果たして生還できるものはいるのだろうか――。設定から構成までのすべてにおいて破格を極めた、まさに異形の本格とでもいうべき異色作。
 
『女神』は、事故死した両親の遺産相続手続きのため、語り手の“おれ”は行方知れずとなっている姉を探すうち、奇妙な集団の手の内に堕ちてしまう。果たして主人公の運命は――サスペンスと交錯する騙りの技巧が際立つ一編。
 
『積木花園』は、子どもが残したと思しき異様な手記の謎を調べるうち、探偵は、ある館で発生した過去の連続殺人事件の存在を知る――島田荘司『眩暈』を彷彿とさせる幻想めく手記の謎と『斜め屋敷』式の連続殺人に、小島正樹・谺健二直系の奇想を凝らしたテンコモリな一編。
 
『棄子』は、とある大富豪から、愛人の生んだ息子を探してもらいたいとの依頼を受けた探偵の物語。穏やに進行する探偵の調査過程に、陳浩基『世界を売った男』ばりの企みを凝らした一編。
 
『暗號』は、被害者が質屋に預けたポケベル――そこに残されていた暗号を巡って、二人の刑事に若き鑑識員と、真犯人との長きにわたる暗闘を描いた一編。『13.67』のような「継承」が裏テーマとしてあり、異様な真犯人を追いつめる刑事側の執念を描いた人間ドラマ。
 
『喪鐘為你而鳴』は、本格ミステリ作家の私が眼を覚ますと、見知らぬ島にいた――突然島にやってきた謎めく団体内で発生した連続殺人事件の真相とは、という話。
 
――というわけで簡単にあらすじ紹介をしてみましたが、二次選考通過作の発表は金車から近日中にあるのではないかと思います。なお、二次選考を通過した三編は入選作として皇冠文化から出版される予定。刊行され次第、もう一度各作品を取り上げてみるかもしれません。