植田正治の写真世界@FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館

東京ミッドタウンのFUJIFILM SQUARE・写真歴史博物館で開催されている、『終生モダニズムを貫いた写真家「植田正治の写真世界」』を観に行ってきたので、簡単に感想をまとめておきます。実をいうとFUJIFILM SQUAREを訪れるのは初めてで、中に入るなりドーンと企画写真展「新田次郎の愛した山々」の展示があったので、ヤバッ、会期を間違えてしまったかと一瞬戸惑ってしまったのはナイショです(爆)。

写真歴史博物館は、「新田次郎の愛した山々」が開催されているフォトサロン・スペース1の奥にあり、件の「植田正治の写真世界」は、富士フイルムの過去から現在に至るまでのカメラやフィルムをズラリと展示されているスペースの壁一面を使って、――といっても、フォトサロンの壮観な山岳写真に比較すると、かなりこじんまりとしたかんじで展示されていました。

植田正治のプリントをこれだけのボリュームでじっくりと眺めるのもこれまた初めてで、写真集しかり、また今回の写真歴史博物館のパンフレットに添えられているいくつかの写真もそうなのですが、いずれもモノクロ。有名な砂丘シリーズなどは白と黒のトーンのイメージが強くあったのですが、今回展示されていたプリントはセピアが強く、ノスタルジックな雰囲気を色濃く出した仕上がりになっていました。

やはり写真集などで見るよりも、オリジナルプリントは豊富な階調によって構築された細部をじっくりと眺めることができるのがいい。「ボクのわたしのお母さん」や「小狐登場」などの有名どころはもとより、今回印象に残ったのは、イヴ・タンギーを彷彿とさせる構図と柔らかなトーンが美しい「小さな漂流物」、マグリット的な構図を繊細なモノトーンで仕上げてみせた「砂丘ヌード」あたりでしょうか。

ここ最近は、川内倫子や中村綾緒など、動画のインスタレーションも交えて写真の中に時間の”流れ”を感じさせる作品を見てきたので、今回の「植田正治の写真世界」は、完璧なボージングと陰影の演出によって構築された”瞬間”という、――写真ならではの魅力の原点を再認識できたのが大きな収穫で、さらに最近注目している原久路(本好きであれば、保坂和志の『カフカ式練習帳』のジャケ写真、といえば判るカモ)とも通じるポージングの妙にニンマリしたりと、大満足の展示でありました。

それとせっかくFUJIFILM SQUAREに来たのだからということで、X-Pro1をシツコイくらいに触ってきました(爆)。コレ、一応、NEX-7を手に入れるときの最有力候補の一台でもあったわけですが、よくよく考えてみれば、現在用意されているフジノン・レンズは35mm換算で28mm,50mm,90mmと、いま使っているGXRと完全にカブることに気がついた次第で……というのも、自分がGXRをメインに持ち出すときは、たいてい、A12 28mm,50mm,それにA12 MOUNTにマクロ・プラナー 60mm F2.8cという組み合わせがデフォルトであるため、これでは変わりがありません。ここでX-pro1のレンズのラインナップに35mmがあれば、おそらくNEX-7ではなくコッチに行っていたカモしれません。とはいえ、35mmはおそらくX100があるから、ということで、はじめに28mm,50mm,90mmというセンでブツけてきたのでしょうが、個人的にはチと残念、ではあります。

植田正治のプリントを堪能できて、さらにはX-Pro1が触り放題なわけですから、これは行かないテはないでしょう。『終生モダニズムを貫いた写真家「植田正治の写真世界」』は八月三十一日迄。