NEX用のキワモノアダプター、METABONES「SPEED BOOSTER」(Y/C)の無限遠を調整する

前回の続きです。本来であれば、今回のエントリではさっそくレンズをつけたりして、このキワモノアダプターの描写をテストしていくべきなのですが、まあ、自分はレンズの手持ちもそう多くないし、そのあたりは追々ノンビリやっていくとして(汗)、今日はSPEED BOOSTERの無限遠を調整したよ、という話。

一般的なマウントアダプターは、いってみれば接写リングのようなただの筒ですから、調整などはおおよそ不可能ながら、このキワモノアダプターは内部にレンズをかませているため、ちょっとした調整は可能です。当たり前の話ですが、古いレンズであれば個体差があるわけで、それらすべてにおいて問題なく無限遠がキッチリでる夢のようなアダプターなどある筈がありません。もっとも自分が入手したSPEED BOOSTERは、だいたいのレンズにおいて”ほぼ”無限遠が出ました。この”ほぼ”というのが曲者で、たとえばDistagon 35mm F2.8はやや甘いように感じられる一方、Vario-sonnar 35-70mm F3.4などはほぼ完璧といった具合で、こうなるとどのレンズを基準に無限遠を合わせていくかということが課題となってきます。

自分の場合は、Distagon 35mmとPlanar 50mm F1.7という、手持ちの中ではもっとも安価なレンズを多用したいというひねくれた思いがあり、結局のところ、もっとも無限遠が出ていないPlanar 50mmに合わせて調整を試みることにした次第です、――というか、METABONESが公式サイトにくだくだしく書いてある通り、普通はこんな調整はしなくてもいいわけで、あくまで” as a last resort”としてヨロシクお願いしますよ、ということでしょう。

ではそのやり方ですが、実はそれほど難しくはありませんでした。自分はPCやサーバであればバラしたり組み立てたりは普通にやっているものの、こうした光モンについては分解経験もなく、ビビりまくっていたのですが、実際はというと精密ドライバー一本でチョチョイとやるだけでアッサリとできます。

METABONESの公式サイトにあがっている写真は電子接点があるので、おそらくEFマウント用かと推察されるわけですが、Y/C用も仕組みは同じです。一応、自分のブツの写真を添えておきますと以下のようなかんじ。

NEX-7 + CONTAX Makro-Planar T* 60mm 2.8c60mm 2.8c
NEX-7 + CONTAX Makro-Planar T* 60mm 2.8c60mm 2.8c

このネジで中のレンズを固定してあるだけなので、これを緩めるだけで、レンズを覆っている黒い枠をククッと廻すことができます。で、重要なのはどのくらい廻せばいいのかにつきるわけですが、レンズによってはかなり思い切っていってしまっても良いと思います。参考までに、自分のPlanar 50mm F1.7では、ほぼ半回転(180度)ほど廻しました。最初は2ミリ、1センチなんてかんじでチマチマやっていたのですが、まったく変わらないので、ままよとばかりに45度ほど廻したところ、ようやくそれらしくなってきたので、あとはかなり大胆に廻して調整した次第です。

NEX-7 + CONTAX Makro-Planar T* 60mm 2.8c60mm 2.8c
NEX-7 + CONTAX Makro-Planar T* 60mm 2.8c60mm 2.8c

とはいえ、元々の調整位置からずれまくっても、今度は他のレンズを使う際に支障が出てくるので、作業を行う前にある程度の目処はたてておくべきでしょう。このPlanar 50mm F1.7は、KIPONのアダプターではまったく無限遠が出ず、GXRで使用していたMマウント-Y/Cアダプターに、NEX-Mマウントアダプターを重ねることで、ようやく無限遠が出るようになったという代物です。自分の手持ちのレンズでここまで無限遠がずれているのはこの個体だけだったのですが、今回は常用したいDistagon 35mmでも若干の甘さがあったので、調整を決意したというのは上に書いた通りです。

もちろん絞れば無限遠は出ます。このPlanarでもF8まで絞れば”どうにか”無限遠は出たのですが、これでは夜に遠景を撮ることはできません。そこで目標として「F2.8で無限遠が出るようにする」という目処をたてて調整を行ったわけです。

では、調整前と調整後はどんなものなのかというと、こんなかんじ。

NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7
NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7
NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7
NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7

上の二枚の写真は調整前で、f2.8まで絞って無限遠にしたときの写真の切り抜きです。ぼけぼけで話になりません。では調整後の写真がこちら。

NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7
NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7
NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7
NEX-7 + SPEED BOOSTER(Y/C) + CONTAX Planar 50mm F1.7

NEX-7では、ピーキングでピントピークを表示できるので、調整に便利です。老眼だといくら拡大しても果たして完全にピントが合っているのか自信が持てないのですが、ここは機械任せでいくのが吉でしょう。

ここまでずれていたものを調整したわけですから、他のレンズを使うときには支障が出るのではと危惧されるのですが、まあ、それほど実害はありません。無限遠にするといっても、自分の場合、ピント合わせは基本的に拡大表示で確認しながら行うし、銀塩時代であれば、無限遠にするときにはちょっと”戻す”というのはごくごく普通に行っていたので、違和感はなし。というわけで、SPEED BOOSTERを手に入れたものの、オールドレンズでどうしようもないくらい無限遠が出ないという方は調整にトライしてみるのも面白いですよ、という話でした。

無限遠が出るようになったところで、次回は、手持ちのレンズの解像度の検証を予定しています。これには最新のEマウントレンズのほか、今まで50mm用の常用レンズとして使用していたGXRのGR LENS A12 50mm F2.5 MACROも加えてのテストをしてみます、――というか、実際の撮影は今日すでに終わらせているのですが、予想通りというか、GXR使いとしてはやや意外な結果となりました。まあ、いまさらのGXRか、NEXかと考えている方の参考になれば幸いです。というわけで以下次号

NEX-7 + CONTAX Makro-Planar T* 60mm 2.8c
NEX-7 + CONTAX Makro-Planar T* 60mm 2.8c