体調が優れないのゆえ、まだ間が空いてしまいました。紙本は快復するまで控えるとして、それでもKindleとReader™ Storeで手に入れた本はボチボチ読んではいるのですが、なにしろ極力パソコンでの作業を控えているため更新が途切れ途切れになってしまう次第で、――という言い訳はこのくらいにして(汗)、本題に入ります。
本作もエロ怖シリーズにおける宇佐美まこと女史の一冊ながら『悦楽地獄』以上に微妙というか……(爆)。しかし何となくですが、ミステリ的技巧を凝らしまくった作風よりも、『悦楽地獄』や本作のような作品の方が(女性)読者の受けがよいのではないか、あるいは担当の編集者がこういうのを書けといっているのか、本作もまた、宇佐美女史本人の志とはやや異なる意識で書かれた作品のような気がします。
物語は、タイトルから推察される通りに、エロ怖の「怖」といってもどちらかというとコメディ調で、冒頭ヒロインが車内で痴漢に襲われるシーンから始まります。そこでヒロインがちょっと斜め上を行く行動に出るのですが、これがまさかまさかの最後の伏線になっていたのはかなり意外。
彼女は仕事の中で、曰くアリの過去を思い出し、かつて愛していながらもある理由によって離別することになった人物を訪ねていくのだが、――という話。この因縁にエロを絡めているのは当然として、今回もヒロインは『悦楽地獄』と同様、マゾ気質の本領を発揮、好きな男がいながらもゲスい男にやられっぱなしという展開に到るわけですが、彼女が会いに行った人物が思わぬ変身を遂げていたことや、上にも述べた幕引きに、コメディ路線を予感させるタイトルから想起される通りの伏線を凝らしてささやかな驚きを添えているところなど、軽すぎる風格と駄作スレスレのきわどさを見せながらもそこは宇佐美女史、ミステリの技法を活かした伏線回収や真相開示の趣向にはやはり見るべきものがあります。
とはいえ、個人的にはやはり『淫らなツユクサ』や『の・ぞ・く――天窓の下』のような本領発揮ともいえる傑作を期待してしまうわけですが、新刊の『欲張りトモコの体験』もタイトルからして相当にヤバい香りがするし、とりあえず購入はしたものの、そのまま放置してある『摩天楼のケモノ』や、『肥満女のかぎりない欲望』にいたっては何だか頭を抱えてしまう言葉の並びに不安な予感しかしない、――といってもこのエロ怖をこうして真面目に取り上げる好事家も少ないかと思われるので、とりあえず読了したものはこうしてボチボチ感想をあげていきたいと思います。