落差草原 WWWWの自主製作による処女作。先日取り上げたフルアルバム『泥土』に比較すると、EPという制約もあってか爆発力はやや控えめ。しかしながら四曲のみという編成ゆえか、呪術的な要素も添えたリズム主体の音は大変に馴染みやすく、これだったらニューエイジ畑のリスナーもさらりと聴きこなせるのではないかという気がします。
単調にしてシャーマニックなリズムに電子音と囁きが交錯する「尋找白色衛星」は、さりげなく切り込んでくるベースが心地よい。「紅色的湖」もその音像は「尋找白色衛星」に近く、こちらはよりリズムをシンプルにして、ジャーマン・ブログレでいうと初期CANのような雰囲気を醸し出しているところがかなりツボ。「小細節與事件」はテープを逆回転させたかのような音のみで構成された小曲。本作のタイトルにもなっている「通向烏有」は、呪術的な雰囲気たっぷりにしずしずと盛り上がる前半から、ロックらしいドラムが切り込んできて一気にセッションっぽい転調を見せる構成がいい。ちょっとレコメン系というか、こうした音を今、それも台湾で聴けるということに、ロートルのプログレマニアである自分は不思議な感慨を覚えてしまうのでありました。
本作に続く『太陽升起』は、よりジャーマンっぽく、そして歌も取り入れてコンセプトアルバムらしい構成で聴かせてくれるのですが、自然の音をそのままトレースした現在の風格の萌芽はすでにこのアルバム『通向烏有』でも十分に感じられます。今であれば『泥土』からこのバンドの音に入り、そこから遡っていくという聴き方も十分にアリではないでしょうか。青春時代にジャーマン・ブログレへドップリ浸かったロートルの方に是非ともオススメしたい一枚です。