台湾カルチャーミーティング2017第7回「台湾音楽散歩--台北で音を見る、声に触れる」@台湾文化センター

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昨日、台湾文化センターで開催された第7回台湾カルチャーミーティングに参加したので、簡単ながらここに感想をまとめておきたいと思います。このイベントへの参加は、『台湾カルチャーミーティング2017第3回 「出版をリブートする-台湾出版文化の多様性と未来」』に続いて2回目となりますが、前回が文学だったのに関して今回は音楽。台湾ミステリのほか、台湾音楽のインディーズ・シーンにも興味津々の自分にとっては、なかなか愉しめる内容でした。

今回のゲストは社会学者の李明璁氏。プロフィールに「イギリス・ケンブリッジ大学(キングス・カレッジ)で、社会人類学博士号を取得。2001年には日本・ICU(国際基督教大学)で客員研究員を勤める。現在は、台湾大学社会学部で教鞭をとる」とあったので、結構コ難しい講義カモよ、――と危惧していたのですが、そうした不安を鮮やかに吹き飛ばしてくれる内容で、たくさんの学生たちが聴講に殺到するとの評判も納得至極。

社会学的なアプローチによって音楽を理解する、――というのが今回のトークのコンセプトでありまして、最初に提示されたスライドで、「Individual 個人的」「Interpersonal 人際的」「Public 公衆的」からなる三角形を示しつつ、おのおのの音楽に対する評価の手法について詳しい説明がありました。そのあたりを大きく端折って簡単に述べると、それぞれの音楽には「個人的にはイケてるけど(Individual)、大衆受けはしない(Public)」とか、「ヒットチャートを賑わしているけれども(Public)、個人的には好きになれない(Individual)」とか、「周りで話題になっているけれども(Interpersonal)――」というふうにIndividual、Interpersonal、Publicという三つの評価軸から受容の有り様を見て取ることができる――とのこと。この長い長い導入部を経て、李氏の少年時代から現在に至るまでの個人的体験を通じて、台湾の音楽シーンの変遷を見ていくという内容でした。

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「出版をリブートする-台湾出版文化の多様性と未来」でも、八十年代・九十年代における政治的変化と文化との繋がりが示されていましたが、音楽においても、とくに八十年代の大きな変化については注目しておくべきだな、と今回の李氏の講義を通じて感じた次第です。美麗島事件以後の緊張状態にある八十年代において開催された羅大佑のライブや、黒名単工作室の存在など、大衆における政治活動のうねりの中で大衆に支持されてきた八十年代の音楽については未体験ながら、それとは対照的な様相を見せる九十年代の音楽は、自分もある程度リアルタイムで聴いていました。今回司会と通訳を務めた天野健太郎氏も、台湾に留学していた九十年代に、CDショップで陳綺貞や孫燕姿などを見つけたのをきっかけに台湾の音楽も聴くようになったと話していましたが、このあたりは自分も同じ(特に陳綺貞は台湾ミステリというものの存在を知るきっかけとなった歌手でもあります)。

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ここで李氏は九十年代後半の98、99年に、陳綺貞、五月天、閃靈がデビューしていることに注目。90年代後半から、音楽シーンの担い手が70年代生まれの世代へと変わっていたと指摘します。

ではゼロ年代から今にいたるまでの状況はどうなっているのか。政治はもはや直接的に重々しく語られるべきものではなく、そうした軛から解き放たれた自由な空気が今の台湾の音楽シーンにはあるといいます。盧廣仲、大象體操、草東沒有派對をその象徴として取り上げつつ、PVを流しながらさまざまな逸話を披露。例えば、――帰国してから観に行った盧廣仲のライブでは、聴衆も二十人に満たないほどだったとか。今では大会場を埋め尽くすほどの人気シンガーへと飛躍した盧廣仲ですが、そうした不遇時代があったからこそ今の人気があるんだなァと感じた次第です。また大象體操のメンバー(「彼」といっていたので、張凱婷ではなくて、張凱翔のことかと)は彼の教え子で、『頭,身體Head&Body』のPVを制作したスタッフは、当時の彼らと同じ学生だったとのこと。確かにあのPVを眺めるにつけ、ちょっとアマっぽい感じがしていたのですが、李氏の話を聞いてこれまた納得。

李氏はプロフィールにもある通り、90年代にはICUの客員教員として日本に滞在していたこともあったわけですが、この当時の話はもう少し聞きたかったですね。90年代の日本におけるインディーズ・シーンといえば、吉田達也、灰野敬二、大友良英、ホッピー神山、勝井祐二をはじめとする奇才鬼才が日本と世界のアンダーグラウンド・ロックーシーンを股に掛けて大活躍を始めた頃の筈で、ホッピー神山の「ゴッドマウンテン・レーベル」、勝井祐二の「まぼろしの世界」、吉田達也の「MAGAIBUTS」などなど、――と完全に趣味嗜好がプログレ周辺に偏っていますが(爆)――綾辻行人『十角館の殺人』が刊行された当時の講談社ノベルズのように、ディスク・ユニオンで見つけたCDを片っ端から買いあさっていた時代が懐かしい。

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自分のこうした好みは今も相変わらずで、台湾のインディーズシーンにおける注目バンドが落差草原WWWW(夏に来日したのにリーマン仕事が忙しくてライブに行けず)、破地獄(最新作『山險峻』は傑作!)、FOREST(最近再来日しましたが、こちらもリーマン仕事でスケジュールが合わず)といった、90年代における日本のインディーズシーンを想起させる”熱い”ロックばかりというところがなんともなわけですが、陳綺貞は今でも新作を心待ちにしているほどの大ファンだし、これからも台湾のポストロックシーンにおける最注目バンドTriple Deerや林瑪黛など、”軽め”の音楽も平行して追いかけていくつもりです。

九十年代以降のリアルタイムで聴いてきた時代を遡っての台湾の音楽シーンにおける政治との関わりなど、『第3回 「出版をリブートする-台湾出版文化の多様性と未来」』との重なりを見せる視点も多く、こうした共通項を探りながら台湾カルチャーの過去と現在を俯瞰してみるのも面白いかなと感じました。この台湾カルチャーミーティング、後もう少しで終了ですが、結構な人気ですぐに定員いっぱいになってしまうので通しで参加するのはなかなかに難しいものの、また来年もこうしたイベントがあれば積極的に参加していきたいと思います。おしまい。

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