凹 Concave / 王榆鈞

恐るべき傑作。先日、青山月見ル君想フへライブを聴きに行った王榆鈞のコンセプトアルバム、――といっても、収録されているのは三曲のみというコンパクトさで、実際はEPと呼ぶべきでしょうか。青山月見ル君想フで開場前に並んでいるうちお友達になった大先輩I氏が「最初のシューゲーザー的な浮遊感のあるギター・ドローン」と語っていたのに興味を持って購入したのですが、これは大当たり。

曲名は「#1」、「#2」、「#3」とシンプルを極めたものながら、三曲という短さだからこその起、転、結の構成が素晴らしい。「#1」はかき鳴らされるギターのリフが延々と繰り返される、――台湾のポスト・ロックでは意外にありふれた曲風かと思っていると、中盤からはエコーを伴いながら音の重なりが渦を巻いてノイズの中へとかき消えてはまたさざ波のように聴くものへと迫ってくる曲想が素晴らしい。これを聴いてフと思い出したのは、Walter Fähndrichの『Walter Fähndrich: Viola Nos. 2, 3, 4 & 6』あたりでしょうか。しかしギターを重ねていっただけとはいえ、リズムにおいては敢えて緩急を排したまま、徹底的に音の波の揺らぎにこだわりまくった実験精神だけでも大いに買い、でしょう。

続く「#2」はシンプルにつま弾かれるギターに子供達の合唱がゆらゆらと現れてる“だけ”という、これまた音像を聴く者にイメージさせるゆったりと心地よい曲調が印象的。後半からすっと入ってくる様々な効果音とピアノが醸し出すたおやかな雰囲気は、これまたシガー・ロス的ともいえ、好きな人にはタマらないのではないでしょうか。

「#3」はギターのアルペジオに彼女の翳りのある歌声で、ただひたすら「ドレミファソラシド」と唄われるだけという一曲。「#2」の子供の合唱から彼女の「ドレミ」へと続く構成にも無理がなく、「#3」を聴き終えると、またまた「#1」のギターノイズから聴きなおしてしまいたくなる、――そんな中毒性も含めて大いに偏愛したい一枚といえます。『沙灘上的腳印 the Tracks on the Beach』もついでに買ってしまったのですが、こちらはまだ未聴ながら、19曲を収録したフルアルバムっぽいので、もう少し仕事が落ち着いたらジックリ聴いてみたいと思います。

[関連記事]
王榆鈞「音を編む」@青山月見ル君想フ

2 comments on “凹 Concave / 王榆鈞

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です