Urban Shepherd / Triple Deer

「台湾のインディーズ・シーンでいま一番お気に入りのバンドは?」と聞かれれば迷うことなく「Triple Deerだよッ!」と答える自信がある自分としては、待ちに待ったフルアルバムのリリースです。バンド名を冠した三曲収録のEP「Triple Deer」で、動静の緩急をつけながら美しい旋律で盛り上げていく曲風に魅了された自分としては、今回のアルバム“全体”がどんな雰囲気に仕上がっているのか、――とリリース前からかなり気になっていたのですが、変わらないところは不動のまま、そして思わぬ変化を感じた部分もあったりと、かなり興味深く聴き通しました。いずれにしろ大変な傑作であることは間違いありません。

前作のEPでは「門」「二號捕手」「花的名字」と中国語で曲名を配していたのが、今回はいずれも英語もなっているところがちょっとした変化、――でしょうか。とはいえ、自分はデジタル・ダウンロード版を購入したので、CDの方には中国語のタイトルも一緒に併記されている可能性もアリ。

冒頭を飾る「Hundreds of Hugs」がいきなりドラマチックな爆発で始まるところは、前EPの「門」がゆったりとした強調で次第に盛り上がっていくのに比較してまず驚かされるところでありまして、続く「Urban Shepherd」からは前作からの延長線上にある作風といえるでしょう。動静の「静」の部分から曲はゆったりと進行していく、――このたおやかさもまたこのバンドの大きな魅力の一つで、さらにこの曲ではストリングスやメロトロンを彷彿とさせるキーボードワークが印象的。ここは前作からの大きな変化といえるような気がします。

「To Be A Whale」と「Pray in Cycles」もまた「Urban Shepherd」と同様な曲風で、静からじっくりと盛り上がり、動へと流れていく構成がたまらなく心地よい。冠宇と永純によるツイン・ギターも、音色の違いが前作以上に際だっていて、どこを切り取っても二人のギターの音がしっかりと聴き分けられるようなミキシングも素晴らしい。エコーをかけて浮遊感を意識したミックスを仕掛けていた前作に比較すると、今回はより生音に近い感じに仕上げてあるのですが、やや後ろの方で鳴っている重量感のある凡凡のドラムや、一等地味で控えめではあるものの、しっかりとツイン・ギターの重厚音を支えているMoto(すっごく可愛いッ!)のベースもとてもイイ。

続く「Shelter From The Rain」は疾走感のある曲調と、ここでも「Urban Shepherd」と同様、邵軒 のキーボードワークがモダンな色合いを添えていて、硬質なギターとの対比が美しい。

そして本作のクライマックスともいえる「Yozora」は、前作EPの「花的名字」にも比肩する名曲でしょう。この曲のPVは本アルバムがリリースされる前に公開されていて、同性愛の二人の物語を幻想的なトーンで描き出したこの映像は大変に衝撃的でしたが、青を基調とした前半のムードが、ギターの爆発とともに焔の猛々しい赤色へと転調する演出も素晴らしいの一言(ちなみに華流インディーズ・シーンにおける”鹿”といえば、このTriple Deerとともにもう一頭の”鹿”がいるわけですが、このバンドの新曲のPVがこの「Yozora」と不可思議な対照性を見せています。これについては明日以降に語る予定)。

「City Lights」は、明るい曲調でゆったりと盛り上がっていく構成で、すっと音が消えたあと、静かにフェイドアウトしていく趣向もまた心地よい余韻を残します。

いずれにしろ台湾のポスト・ロックの中ではあまり目立たない存在かと思うのですが、個人的にはイチオシ。是非とも来日公演を、と期待しているのですがどんなものでしょう。しかしながら、絶対にないだろと思っていた落差草原WWWWがフジロックに出演してしまったりと最近の台湾インディーズ・シーンは本当にどんな奇跡が起こるか判らないような状況なので、あるいTriple Deerも……という期待を寄せて明日のライブに備えたいと思います。おしまい。

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