忘見湖のほとりに建つ別荘で発生したおぞましき殺人!
ふとしたきっかけから別荘の老主人を客として乗せた閻良は、その人物がアルツハイマー病であることを知る。主人を別荘に送り届けた彼はここにしばらく滞在することになるが、そこで殺人が! 宙づりにされた巨大な鳥籠の中で無残な屍体となって発見された”紳士”たち。あるものは全身を焼かれ、あるものは、血を、爪を、歯を、そして腎臓を抜き取られていた。ステンドグラスに描かれたヨハネの黙示録の啓示の通りに行われた犯行の意味するものは何なのか?!
ステンドグラスにヨハネの黙示録の画が描かれ、それが殺人の予告になっている外連など、黒死館感満載。もっともズラズラズラーッと衒学趣味が開陳された重厚な文章が書き連ねてあるわけでもなく、存外に読みやすいのが本作で、“こういうもの”が好きな読者であればかなり愉しめるような気がします。
一つ一つの殺人のトリックで魅せるような作風ではなく、むしろエラリー・クイーンの某傑作長編にも通じる計画と犯行に凝らされたある趣向を活かしてフーダニットの意外性に焦点を当てた一編という印象です。現在コード型本格が人気を博する今の日本のミステリシーンのであれば、少し前に紹介した馮格『不知山上』と同様、意外な話題を呼ぶ一冊になるかもしれません。
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