光の造形~操作された写真~@東京都写真美術館

ちょっと前になってしまうのですが、東京都写真美術館で開催されている『光の造形~操作された写真~』を見てきたので、簡単ながら感想をまとめておきます。本来であれば川内倫子展『照度 あめつち 影を見る』を見に行ったついでに、こちらも見ておく予定だったのですが、あのときは時間がなくて断念。後日、再び恵比寿を訪れたおり、あらためて『光の造形』展だけをゆっくり見ることにしたのですが、結果的にはこれが大成功。

「平成24年度東京都写真美術館コレクション展」とある通りに、展示されている作品が結構なボリュームで、じっくり眺めていけばかなりの時間を要します。コラージュやデフォルマシオン、リフレクションなど、それぞれの技巧の典型ともいえる写真をまとめて見ることができるため、写されている事物からテーマも読み取ることはもちろん、解説もじっくりと読み込んでいけば「光を利用した画を造る」技巧の理解の助けにもなるという、かなり積極的な鑑賞を愉しむことができるのではないでしょうか。

撮影というよりは、撮影の後の加工に焦点を当てたコラージュやトリミングの現代芸術的な過激な作風を堪能できる、写真初期の作品がとりわけ印象に残り、平井輝七や小石清の名作などはまさにシュールレアリスム。いつもの写真を見る眼でこうしたものを眺めていると、そもそもこれらを「写真」として受け入れることを躊躇ってしまう自分に気がつき、いかんなァなどと苦笑しながら先へと進んでいきます。

コラージュやデフォルマシオンに見られる過激さから、トリミングや多重露光など見慣れた写真が並べられているのを見つけてほっと一息ついていると、さりげなく志賀理江子の「ガーデン」や「カナリア」が仕込まれていたりするから油断がならない。写真の黎明期に見られた実験的精神と、最新のデジタルな技巧とが何の違和感もなく並んでいるところが新鮮で、このあたりのおもしろさはコレクション展ならではのものでしょう。

個人的に一番印象に残ったのは、志賀理江子の幻想的な作風が際立つ「ガーデン」や「カナリア」の作品のほか、やはり有名どころの平井輝七「月の夢想」でしょうか。ブレッソンなどのオリジナルプリントもありましたが、こうしたものの中では、リー・フリードランダーの『Self Portrait』のプリントを見ることができたのが収穫でした。写真集では逆にもう少しトーンを残したかんじで、光の方を強めて、荒涼とした雰囲気を漂わせた写真も見られるなか、オリジナルプリントは、やや暗い会場のためか、より影の部分が強調されていた印象がありました。しかしそれでも、キリコ風にくっきりとした光と影の対比が際立つ作風を堪能することができて大満足。

展示の方は、今週末までということですが、十六日まで開催中の川内倫子展『照度 あめつち 影を見る』とセットで見る価値は十分にアリという充実ぶりゆえ、まだの方には強くオススメしたいと思います。