老眼中年によるkoboの使い心地について(1)

予約していた楽天koboが届いたので、ざっと使ってみた感想を少し。もしかしたらまた何かあるごとにメモするかもしれないので、タイトルは(1)としておきます。

koboのために購入した電子ブックの一冊目は、昨日のエントリで述べたとおり、 辻村深月『鍵のない夢を見る』にしてみました。紙本の方を確認していないので、読み心地も含めた違いについて語ることはできないものの、価格面について見ると、『鍵のない夢を見る』の場合、紙本は1470円。対して電子ブックは1176円。少しだけ安いです。個人的には、たとえばこのくらいの価格差に設定されていると、お得感はさらに高まるかと。『降霊会の夜』の場合、紙本は1575円、対して電子ブックは762円。破格であります。

ちなみに電子ブック版『鍵のない夢を見る』は、「文春ウェブ文庫」となっています。「文庫」とあることに注目で、確かにkoboで読むその感覚は、そのパネルの大きさから文庫本に近いような気がします。もっとも自分の場合は、紙本となる文庫よりも大きなメリットがあるがため電子本にこだわりたいわけですが、この点については後述します。

さて、同じE Inkのデジモノとあれば比較したくなるのが、アマゾンのkindleとソニーのReader。自分の場合、Readerは持っていないので、ここではkindleとkoboとの相違点について述べてみたいと思います。まず大きさですが、肝心要のパネルの大きさはほぼ同じ。kindleの方が下方にあるキーゆえにやや大振りではありますが、重さはそれほど変わらないような気がします。

RICOH GXR + A12 50mm F2.5

ただ持ちやすさという点では、kindleの方が上かもしれません。というのも、kindleの場合、このキーの部分を片手で持って読むことができるのですが、koboの場合、画面にタッチするとページ送りがされてしまうため、迂闊に触ることができないという、――利点であるタッチパネルのはずが、じっくり本を読むという点においては時に面倒くさいことになるのがちょっとアレ。

じゃあ、そのタッチパネルはどうなのよ、ということになると、これは、微妙……。親指でタッチする、人差し指でタッチする、親指で押す、人差し指で押す……色々と試してみましたが、どうもうまくいかないことが結構あります。これは感圧式の方が良かったような気もしたりするわけですが、とにかく癖がある。kindleと同様、単語を辞書で検索する機能もシッカリついているものの、そもそも調べたい文字をうまくタッチして選ぶことができないので、これまたうまく使えないという困った仕様。まあ、このあたりはファームのアップデートで改善してくれることを切に望む次第です。

物理ボタンは、下方にチョコナンとある銀ボタンだけ。わずかな窪みがあるので、本を読むときに、このボタン周辺を片手で持ってもむやみに押してしまうことはありません。このあたりの細部のつくりはよく出来ていると思います。ただここでも物理ボタンがひとつしかないため、メニューボタンがタッチパネルの左上の端っこに追いやられてい、これが微妙に押しづらい。感圧式だったら、こういうときは人差し指の爪を使ってタッチしたりするわけですが、ちなみにこのkoboのタッチパネル、爪でタッチしてもウンともスンとも言いません。まあ、このあたりのタッチの感触は完全に慣れだとは思いますが――。

kindleで本を読む場合、自分はまずPCでamazonにアクセスし、そこで購入。その後、kindleを起動すると、自動的に同期が始まり、kindle本体に購入したデータがダウンロードされる――という流れになります。

koboの場合も、kindleと同様、まずkobo Desktopを起動し、そこで購入を済ませたあと、koboを起動してみたのですが、デフォルトでは起動時に同期は行われない様子(本体のメニューを色々と探してみたのですが、このあたりの設定を見つけることが出来ませんでした)。同期を行うには、パネルの左上にあるメニューボタンをタッチすると、ポップアップが現れるので、「最終同期日時」の後ろにあるボタンをタッチすることで同期が行われるようです。

RICOH GXR + A12 50mm F2.5

自分が電子ブックに期待しているのは、「文字の拡大・縮小ができる」ということで、これこそが紙本に対する最大の利点だと感じています。まあ、積読本を溜めていってしまう自分としては物理的スペースを考えなくて良いというのも確かに大きなメリットではあるものの、今は「文字の拡大・縮小ができる」かどうかの方がかなり切実なところでありまして――。

おそらくkoboをはじめとする、こうしたデジモノガジェットにイの一番に飛びつくのは、エッジなヤング層かと推察されるものの、眼がかなり悪くなったいまの自分としては正直、フツーの文庫本や単行本を読むのがかなり辛い。そこでkindleのように文字拡大が自在にできれば、もう少し本を読むのも捗るのに……と考えているわけです。

kindleも確かシニアに売れているという話をどこかで目にした記憶があるし、koboをはじめとしたE Inkの電子ブックリーダーは、エッジなヤング層よりも、むしろ金をタンマリ持っているシニア層にフォーカスしてアピールしていった方がいいんじゃないかナ、漫画やラノベを増やすのもいいんだけど、もうちっと小説の方もお願いしますよ、とくに昔の絶版本とかね……と思う次第。

東京国際ブックフェアでデモ機に少しだけ触れたときには、フォントが小さくて細くて読みづらかったのですが、文字を大きく設定したらかなり読みやすくなりました。これだったらデフォルトで設定されているモリサワリュウミンでも没問題です。

最初、設定メニューから文字の拡大をしようとして、言語設定はあるものの、文字の設定がないことにブチ切れてしまったのですが、文字の拡大は本を開いたあと、(デフォルトでは)パネルの真ん中あたりにタッチすると、フッダにAAというのが出てくるので、これをさらにタッチすることで設定できます。kindleの場合は物理ボタンがあるのですが、使い心地はそれほど変わりません。

あと、自作のPDFやEPUBファイルですが、EPUBファイルは問題なく読むことができました。koboをUSBケーブルで接続したあと、エクスプローラーでkoboのデバイスを開いて、そこにコピーするだけ。これが正しい使い方なのかはよく判っていないのですが(汗)、少なくともkindleと同じやりかたで読むことができるようになりました。コピーを終えたあと、本体をPCから切り離すと、ホーム画面にEPUBファイルが現れます。もちろん文字の拡大・縮小も自在。自分は一太郎で生成したEPUBファイルで試したのですが、改行文字と句読点の組版にやや難ありとはいえ、普通に読めます(*1)。これは、イイ。ちなみに写真は、koboに落とした私家版の寵物先生「われはハイブリッド――I, Hybrid」(原題「吾乃雜種」)。

RICOH GXR + A12 50mm F2.5

――というかんじで、同じE Inkを用いたkindleと比較しつつ、koboの良いところを述べてきましたが、最後にこれはどうにかしてくれッ!というところをひとつ。かなり頻繁にフリーズします(爆)。……いや、正直にいうと、上に述べた通り、タッチパネルにかなりクセがあり、何度タッチしてもダメなので、自分がうまくタッチできてないだけなのか、それともフリーズしているのかよく判っていないというのが正直なところ。昨日、さっそくファームのアップデートがあったのですが、このフリーズについても追い追い、改善されていくことを期待したいと思います。

簡単にまとめると、この値段でこれだけ使えれば文句なし。個人的には、自分のような老眼中年、シニア層の人がもっと手に取ってくれればなア、と思います。それとあとは電子ブックの点数をとにかく増やして増やして増やしまくってくれれば、このkobo、かなり面白いことになっていくのではないでしょうか。

[07/24/12: 追記]
(*1) ここに書いてあった通りに、「ファイル名を.epubではなく.kepub.epub」に変更したものをmicroSDカードに入れてみたら、一太郎で仕上げた通りの綺麗なフォーマットで表示されました。別に本体にコピーせずとも、microSDカードに入れれば問題なく読めるので、こちらの方が便利(チャンと取説読まないとダメ)。