梁香 Fragrance Liang Live @ shibuya PLUG

以前取り上げた派樂黛唱片のオムニバスアルバム『派樂黛F1-哲人之石』。これに収録されていた梁香の『如果我可以接受沒有如果』の感想で「是非ともライブで聴いてみたい」なんて書いていたわけですが、facebookを見ると何となんと今度日本でパフォーマンスを演るとのこと。こりゃ観に行かないと、というわけで昨晩はゲリラ豪雨のなか渋谷まで行ってきました。ただ、この記事、タイトルにはちょっと偽りありで、ライブのタイトルは『PEROPERO JAPAN TOUR 2015』。梁香はそのオープニングアクトのメンバーとして演奏したバンドのひとつです。なおゲストですが、梁香のほかはMOP of HEADとLotus Landいう布陣でした。

shibuya PLUGの告知ページを見ても、梁香のプロフィールにはAlpha嬢の写真に「梁香 ( from Taiwan )」と文字が添えてあるのみで、おそらく日本ではほとんど知られていないのではないかと。――といいながら自分もつい最近『派樂黛F1-哲人之石』で知ったばかりなわけですが(苦笑)。

一応、facebookStreetVoiceに書かれてある文章を簡単に日本語でまとめてみると、梁香というのは「架空のキャラクター」で(そういえば林瑪黛Ma-te-Lin もこういう設定でした)、その紹介をかなり意訳するとこんなかんじ。

梁香 Fragrance Liang。彼女は架空の人物であり、一般的には艶やかな容姿を持った若い女性として認識されている。梁香とはまた昔日の追憶が幻想となって現れたものであるといってもいい。人は心のうちに渇望を秘めており、その思いはまたそれぞれであろう。

シンセサイザーのMADとボーカルのAlfa――切々とした歌声とシアトリカルなその歌唱によってもたらされる音空間。季節が移ろう須臾の間に、ときに激しく、またときには世俗へと寄り添いながら、彼女の歌声は煩憂から人々を解き放つ。この世界の彼女は日々の生活や思念、記憶、欲望――さらにはその奇妙な体験を通じて、滾るほどに激しい魔性を祓い清めていく。

多くのバンドとは異なり、二人はあたかも修行のごとく、一年の四季を創作と歌に捧げている。水を媒介として、人と人にあらざるものたちが持つおのおのの成り立ちはなだらかに溶けていく。しかしそれでも自己の存在そのものが消えることは決してない。

梁香は、シンセのMADとボーカルのAlfaの二人からなるユニットで、Alfaは顯然樂隊Obviouslyでボーカルとギターを演奏。ただ顯然樂隊Obviouslyのメンバーたちが仕事や学業で多忙となり、バンドとしての活動が停止状態であった最中、Alfaが自らのパフォーマンスのプレゼンのために映像『生為女人,我很抱歉』(女に生まれて、ごめんなさい)を製作。この企画が一年の時を経て発展したのが梁香であるとのことです(以上、Blow 吹音楽の記事「梁香魅世新作九月解禁 日本巡迴同步展開」からの情報)。

シンセと女声ボーカルのユニットというと、プログレ耳を持ったロートルとしてはやはり多加美をイメージしてしまうのですが、今回ライブで数曲を聴いた印象はやや異なるものでした。ステージに上がった二人のシャーマンめく出で立ちや、Alfa嬢のシアトリカルな踊りも交えて歌われる曲調と、MAD氏の自然をそのまま音に置き換えたような風格は、やはり七〇年代のジャーマンプログレ――Popol Vuhあたりをイメージしてもらうと判りやすいのではないかと思います。女声ボーカルの入ったPopol Vuhのアルバムといえば、『Hosianna Mantra』ですが、あの静的な雰囲気に、初期の『Affenstunde』や『Aguirre』に見られたドローンめく通奏低音とTangerine Dream のサンプリング、さらには最近のブレイクビーツを添えたような、――というか。

上にも挙げたような七〇年代ジャーマンプログレの質感を、日本の風土と重ねておそるべき音世界を創出した多加美(というよりはプネウマの、というべきでしょうか)と同様、梁香の音楽もまたそのシャーマニックな音と歌唱には、彼らならではの強い個性が感じられます。Alpha嬢の歌唱法は、ときに台湾原住民の歌声を想起させ、また激情を極めながらどこまでも高みへとのぼっていくかのような流麗な歌声にはMeredith Monkのような驚きもあったりと、この雰囲気はちょっと今の日本にはないなァ、と感じ入った次第です。

MAD氏が駆使するシンセの音は、上にも述べた通り、いかにもな現代風ではなく自然界の音をシンセで表現したかのような雰囲気が素晴らしく、途中のMCでは、「水と森の――」みたいなことを語っていたので、だとすると自分が一聴したときのこの感覚は正しかったのかなと思ったり。そうした音の質感から、七〇年代のジャーマン・プログレの”あの音”をイメージしてもらうのが一番判りやすいかなと思う一方、最近の日本の音でこれに近いものは、といわれてもちょっと思いつきません。強いて挙げるとすれば、ZaiSeNuあたりでしょうか。内省的でありながら、自然界の様相を音に置き換えたような感覚という点では、かなり近い雰囲気ではないかと思います。

それとライブもオープニングアクトの時は客の入りも少なく、撮影禁止と大書きもされていなかったので、梁香のスタッフのカメラマンがキャノンの高級一眼レフでパフォーマンスを撮っているのに乗じて(爆)、後ろからコッソリ何枚か撮影したので掲載しておきます。

梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。
梁香のライブパフォーマンス@ shibuya PLUG(写真はDSC-RX1)。

最近リリースされたファースト・アルバムは今月中旬に台湾に行ったときに手に入れるかなと考えていたのですが、なんとなんと会場で販売していたので無事ゲットすることができました。これからジックリと聴いてまた感想を挙げたいと思います。

 梁香のファーストアルバム。派樂黛唱片 Dark Paradise Recortから発売。
梁香のファーストアルバム。派樂黛唱片 Dark Paradise Recortから発売。

なお、梁香のfacebookを見る限りでは、このあとも関西、四国でパフォーマンスを行うようで、一応、自分が調べた範囲で、日程と会場へのリンクを張っておきます。

(なお、9/6(日)に松山サロンキティで、また9/10(木)には岡山 LIVE HOUSE PEPPERLANDで、パフォーマンスがあるようなのですが、ともにスケジュールの出演者リストには記載がなかったので、上のリストには挙げていません)

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