『13.67』の作者・陳浩基来日レポート―南部地鶏を食べながら語ってくれた最新作『山羊獰笑的刹那』について少しだけ

DSC00461.jpg

『13.67』の作者・陳浩基が六日の夜に香港から来日していることは、先の記事で述べた通りですが、精力的に活動中です。翌七日は九件の書店廻りをこなし、昨日八日は、彼が来日前に「セカオワのPVで見たことのある聖地は是非とも訪れてみたかったところ」と語っていた文藝春秋社にて、いくつかの取材の合間に自著『13.67』のサイン本つくりなどを行いました。

うずたかく積まれた『13.67』に手慣れた様子でサインをしていく陳氏。昨日の疲れなどはまったく感じさせず、ときおり日本語での冗談もはさみながらすべての作業を終えたあと、文藝春秋の担当編集者A氏とともに近くにある南部地鶏の居酒屋で夕食をとることになりました。そのときにカジュアルな感じで色々な話を聞くことができたのでホンのチョットだけまとめておきます。

もっともいま日本は『13.67』の話で持ちきりで、実際今回の来日もこの本のプロモーションとトークショーが第一の目的であったりするわけですが、やはり個人的に気になるのは今月五日に刊行された最新作『山羊獰笑的刹那』についてでありまして、本格ミステリである『13.67』、サスペンスに作者らしい本格ミステリの仕掛けを凝らした『網内人』とはかなり趣の異なるこの作品について、作者の考えるホラーとは何か、そして『網内人』と『13.67』との“ある関係”と“その後”についてなど、かなりツッコこんだ話をブツけてみた次第です。

DSC00508.jpg

――もうずっと前の話になるんだけれども……台湾のミステリ作家・冷言氏が来日されたときに、池袋で綾辻先生と話をしているのをコッソリ隣で聞いていたんですよ。で、そのときに冷言さんが綾辻先生に「先生にとって、本格ミステリとホラーはどのようなものなんでしょう」みたいな質問をしていたんだけれども、そのときの綾辻先生の言葉っていうのが今でも印象に残っててね。その質問に綾辻先生いわく、「ぼくにとって本格ミステリとホラーというのは車の両輪みたいなもので、どちらかが欠けても駄目なんだ」みたいな話をされていたんですよ。で、自分は前々から、陳さんの作家としての資質というのは綾辻先生に近いんじゃないか、と感じていて。実際、どうなんだろう。陳さんに同じ質問をぶつけるとしたら、どんな答えをするかなあと……綾辻先生も「館」シリーズの新刊を発表する一方で、「囁き」シリーズを世に出して、ホラーであり、本格ミステリでもあり、という方向で作家としてのキャリアを積んでいったわけだけど、そのあたりについてどう思う?

陳浩基氏(以下・陳)「最新作の『山羊獰笑的刹那』といえば、これを書いている途中で、綾辻先生の『Another』がこっちで刊行されて、それを途中まで読み進めていくと「しまった!」と思ったんだ。でも、最後まで読んでみて、その結末と仕掛けは違っていたので一安心したんだけれども……」

――ああ、確かに九月に台湾で会ったときには、そんな話をしていたね。「最新作は、綾辻先生の『Another』みたいな話で、そこに『学校の怪談』を加えたような」みたいな。

DSC00517.jpg

陳「うん。自分としては、ホラーのように見えて、最後に大仕掛けがあって読者をあっと驚かせるようなものが好みなんだ。例えば『気球人』は超常現象を扱ったホラー・サスペンスのように見えて、読み進めていくと最後に仕掛けが隠されている……ああいう感じのね」

――なるほど。つまり『山羊』でいうと、「ホラーに擬態した”本格ミステリ”」ということだね。

陳「ホラーである、つまり本格ミステリではない外観は読者に隙を生むことになるわけだね。他ジャンルのようでいて実は本格ミステリの仕掛けがある――自分が好きな作品だと例えば『殺戮に至る病』とか。あれもまた猟奇殺人を扱ったサスペンスのようでいて、最後にあっ!と読者を驚かせる仕掛けが隠されていたよね」

――確かに『殺戮』はこれでもかっていうくらいの猟奇的な描写が際だっていて、そこに仕掛けがあるとは思わないよね。『山羊』もまたホラー小説としての描写が印象的だったよね。例えば後半、主人公が閉鎖空間のキャンパスから脱出しようと、フェンスを乗り越えて覗き込んだ“向こう側”の情景とか、あのあたりはちょっと、伊藤潤二の漫画を彷彿とさせるというか……。

陳「綾辻先生はホラー映画マニアでもあるから、『囁き』シリーズなどもそうだけど、そうしたホラー映画のメソッドを活用した描写が素晴らしいと思う。その点、自分はちょっと違うかもしれない」

……みたいな感じでとりとめもなく話が進んでいったのですが、『山羊獰笑的刹那』にくわえて『網内人』の話や香港でイアン・ランキンとともにトークショーを行った横山先生からの言葉についても色々と語ってくれたのですが、このあたりについて長くなったのでまた後日。

[関連記事]
13.67 / 陳浩基
網内人 / 陳浩基
山羊獰笑的刹那 / 陳浩基

0 comments on “『13.67』の作者・陳浩基来日レポート―南部地鶏を食べながら語ってくれた最新作『山羊獰笑的刹那』について少しだけ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です