第六回島田荘司推理小説賞レポート(4)

昨年9月の曖昧な記憶を辿りながらボチボチ書いているこのレポート。前回は金車文藝中心での陳浩基、文善両氏のインタビューと『偵探冰室』について少しだけまとめてみたわけですが、このインタビューを終えたあと、一行はタクシーでこの夜の晩餐会場へと向かいました。

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で、この会場となるレストランがなぜ印象深いかというと、店の名前。写真の通り『山海楼』なのですが、実は今回の受賞作である唐嘉邦『野球倶楽部事件』。この作品の主人公の名前が李山海なのです。

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この夜は皇冠の招待だったのですが、まさか平社長のちょっとした洒落っ気で、――とも思えないので(爆)、おそらくは偶然でしょう。

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またこの翌日の昼も『野球倶楽部事件』の内容に関連したレストランで食事をすることになったのですが、それについてはまた後日。

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受賞作である『野球倶楽部事件』については誰かがあらすじを紹介しているかもしれませんが、少しだけ。

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舞台は昭和十三年の台北。プロローグはこのとしの十月三十一日、台北駅からほど近い喫茶店『グランドスラム』から幕を開けます。野球愛好家の日本人と台湾人はここで定期的に交流会を開いてい、この夜は早慶戦の第二試合がもっぱらの話題となっていた。続く第一章では、終点となる北鉄萬華に到着した最終列車のなかで、酒瓶を抱えたまま死んでいる男の死体を見つけ、――というところから、台北南署の刑事である李山海とその相棒の北澤が現場に駆けつける。同時に南の高雄でも寝台列車の車内で死体が見つかり、被害者の二人はともにプロローグに登場した野球倶楽部のメンバーだったことから、倶楽部のメンバーが疑われるのだが、彼らにはそれぞれのアリバイがあり――という話。

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当時の列車や路線が登場し、李山海と北澤のコンビがアリバイ崩しに奔走する一方で、ある人物の過去の描写が挿入されている構成が本作のキモ。ここに凝らされた絶妙な騙りとおどろきの仕掛けによって人間ドラマを描き出した趣向は、まさに受賞作に相応しい傑作といえるでしょう。とくに日治時代の台湾ならではのさまざまなモチーフを鏤めた作風は本作の大いなる個性ともいえ、台湾人だけでなく日本人もかなり愉しめるのではないかと思うものの……うーん……しかし刊行時期は未定(爆)。

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さて、受賞作の主人公の名前を暗示するレストランで夕食を終えた一行はそのままタクシーでホテルに戻り、翌朝は金車のビール工場のある桃園へと向かうことになるのですが、これについては次の記事で取り上げたいと思います。

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第六回島田荘司推理小説賞レポート(3)

 

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第六回島田荘司推理小説賞レポート(1)