先日の『川内倫子展 照度 あめつち 影を見る』に続いて、ましかく写真の印象が強いマイケル・ケンナの写真展がBLDギャラリーで始まっていたので、見に行ってきました。川内倫子の夢心地な淡い色彩に比較すると、こちらは徹底したモノクロ。
藤原新也の『書行無常展』における壁一面といっていいくらいに大きくプリントされた写真や、川内倫子の壮大な仕掛けを凝らした動画の熱にここ最近はかなりヤられてしまっていたので、そうした「毒」を中和するのに、今回のマイケル・ケンナの静謐な空気の漂う、こじんまりとしたモノクロームの写真展は最上の選択だったカモしれません。
BLDギャラリーは、小狭いエレベータに昇って上に行かなければならないため、毎度踏み込むのに躊躇してしまうたたずまいなのですが(苦笑)、小さなプリントをジックリ眺めることができました。独特の緊密なトーンの連なりは、体調を崩して以来、万全とはいえない自分の眼力ではその隅々まで堪能することはできなかったものの、今回の「IN FRANCE」はむしろ中間のトーンよりも、黒が際立つ写真に惹かれるものがたくさんあって大満足。
BLDのサイトでもカバー・フォトになっている、鳩が飛翔している一枚はその典型ともいえ、純白な鳩(いや、眼が良い人が見ればそこにも微細なトーンの連なりを見ることができたのカモ)と、背景の黒とのコントラストにしばし恍惚。また、白黒のタイルを敷き詰めた床面と建物を対比させた一枚は、その黒の深さと白いに近い淡いグレーとの対比に、長谷川潔の銅版画にも似た静謐美を見てこれまたニンマリ、――といったかんじで、小さい写真にぐっと顔を近づけて食い入るように凝視するというスタイルの鑑賞法を強いられるものの、眼がアレな自分でも十分に愉しむことができました。ハッセルマニアやモノクロマニアならずとも、彼独特の美意識溢れる写真は、自分の幻想絵画好きの方も愉しめるのではないでしょうか。オススメです。