王榆鈞與時間樂隊 Yujun Wang & Times 来日公演@青山月見ル君想フ(後編)

前回の続き。そしていよいよお目当てである王榆鈞與時間樂隊の登場となりました。真っ暗なステージに王榆鈞ほか時間樂隊の全員が件のマスクをつけて登場すると、荒々しいギターのアルペジオで始まる「後現代嬉皮」からスタート。

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演出も昨年のソロ弾き語りとは大きく異なり、メンバー全員がマスクをつけて演奏される楽曲はポップスやロックというより、管楽器やアコーディオンの音色をふんだんに絡めたその雰囲気からフォークや西欧の民族音楽を思わせるところが強いような気がしました。

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自分が今まで聴いてきた狭い音楽ジャンルのなかでフと思い出したのは、かつてベル・アンティークから日本版もリリースされたバスク・フォークのアマイア・ズビリア&パスカル・ゲイニュあたりでしょうか。

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バスク音楽といっても、パスカルは現代音楽畑の人だったはずで、バスク・フォークの歌い手であるアマイアとのコンビによる作品群はストレートなバスク・ミュージックとはいえないのかもしれません。

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とはいえ、バスク音楽という視点から見えてくるアマイア・ズビリア&パスカル・ゲイニュの音楽に内在する”異質性”と、台湾のインディーズ音楽という枠内にはとうてい収まりきらない王榆鈞與時間樂隊の“異質性”とが自分の頭の中では不思議な重なりを見せたこともまた事実でありまして、このあたり、おのおのが通過してきた音楽体験からも王榆鈞與時間樂隊の音楽はさまざまな聴かれ方をされるのではないかと。

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語りのような歌い方が印象的だった「活著」など、シアトリカルなイメージが強い曲が多く、「暴民之歌」などは13分以上の大曲だったり、演奏中にマスクを次々とかえていくパフォーマンスなど、ロートルのプログレマニアの琴線に響きまくる演奏は素晴らしいの一言で、一時間ではとうてい足りないくらい。これがワンマンだったらいったいどれほどのものになるのかと。

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しかし以前にここ青山月見ル君想フで体験した柯泯薰といい、台湾のインディーズには本当に演劇的な演出が巧みなアーティストが多いなあ、と感じた次第です。実際今回のライブは、自分にとっては柯泯薰の「DON’T MAKE A SOUND TOUR in TOKYO」と並ぶお気に入りとなりました。

柯泯薰 DON’T MAKE A SOUND TOUR in TOKYO @青山月見ル君想フ

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ところで王榆鈞がつけているマスクとこのステージの様子、何か既視感があるなァ、……と記憶をたぐり寄せていったら思い出しました。マンマこれじゃないかと。実際、王榆鈞與時間樂隊の音楽は、昔日のMARQUEEだったらプログレにくくって大推薦していたのではないでしょうか。

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ベル・アンティークからアマイア・ズビリア&パスカル・ゲイニュがリリースされたくらいですから。当時は今ほどジャンルやサブジャンルも細分化されておらず、こうした大きな音楽ジャンルの括りに入りきらない音楽も、すべてプログレということで容易にアンテナに引っかかってきたものですが、情報過多社会のいまはこうした素晴らしい音楽に巡り会うことができないのがもどかしい。

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久しぶりの青山月見ル君想フでのライブ鑑賞でしたが、ハコの音もいつもの席からよく聞き取れて大満足。余談ではありますが、青山月見ル君想フは激しいロックよりも、柯泯薰や今回のような曲目の方が格段に音が聴きやすいですね。

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――と、この文章は会場でようやくゲットできたニューアルバム『原始的嚮往』を聴きながら書いているのですが、これもまた素晴らしい傑作で、いつかまた時間ができたらこのブログで取り上げるカモしれません。ともあれ、今年初の青山月見ル君想フでこれほどのパフォーマンスを体験できて大満足。たしか今日は横浜、明日は埼玉で彼女たちのライブがあるはずですが、少しでも興味を持たれたかたには足を運ばれることを強くオススメいたします。おしまい。

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王榆鈞與時間樂隊 Yujun Wang & Times 来日公演@青山月見ル君想フ(前編)

王榆鈞與時間樂隊 Yujun Wang & Times 来日公演@青山月見ル君想フ(中編)

王榆鈞「音を編む」@青山月見ル君想フ

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